筋トレやクレアチンははげるって本当?薄毛との関係を解説
「筋トレをするとはげる」「クレアチンを飲むとはげる」という噂をインターネット上などで見かけます。
筋トレには、筋肉量の増加や血行の改善などの効果があり、ダイエットや健康維持などたくさんのメリットがあります。また、筋トレの効果をアップするとして人気があるのが「クレアチン」です。
筋肉を鍛えて理想のボディを目指したいけど、薄毛が進行するのは避けたい……とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、筋トレと薄毛の関係について医学的な視点から徹底的に解説。安心して筋トレをするために、ぜひ参考にしてください。
目次
筋トレではげることはある?薄毛との関係
筋トレではげることは本当にあるのでしょうか?実は、筋トレが薄毛の直接的な原因になるというエビデンスはありません。
ただし、成人男性に多く見られる薄毛である「AGA(男性型脱毛症)」を悪化させる可能性は、ゼロではありません。詳しく解説します。
そもそもAGAの原因って何?
筋トレとAGAの関係を解説する前に、AGAの原因を解説します。
AGAの原因は、男性ホルモンです。男性ホルモンの一種である「テストステロン」と「5αリダクターゼ」と呼ばれる酵素が結びつき、活性型ホルモンである「DHT(ジヒドロテストロン)」に変化します。
DHTが、発毛や育毛に関する司令を出す「毛乳頭細胞」にある「男性ホルモン受容体」と結びつくと、脱毛シグナルが出され、毛の生成や着色をおこなう「毛母細胞」の細胞分裂を抑制してしまいます。
本来、髪の成長サイクルは、毛が成長する「成長期」、毛の成長が止まる「退行期」、毛の成長が完全に止まった「休止期」の3つの時期で構成されています。
脱毛シグナルが出されると成長期が短くなり、髪が成長しきらないまま抜け落ち、薄毛となります。
筋トレをするとテストステロンの量が増える
「筋トレをするとハゲる」という噂の理由は、テストステロンです。テストステロンは、5αリダクターゼと結びつくと、DHT(ジヒドロテストステロン)に変換されてAGAの原因となりますが、実は男性にとって非常に大切なホルモンです。
テストステロンは、筋肉や骨格を形成し、記憶力をサポートする働きがあります。筋トレをして筋肉が刺激されると、ホルモン分泌が活発化します。ホルモン分泌が活発になると、血液中のテストステロンの量が増加します。
テストステロンは筋肉量を増やす働きがあるため、筋トレの観点から見ると、分泌量の増加はメリットがあります。しかし、AGA予防の観点から見るとデメリットとなる可能性があります。
テストステロンの量が多いほど、AGAを引き起こすDHTが生成されるリスクが高くなります。しかし、テストステロンが多いからといって必ずしもAGAになったり、薄毛が進行したりするわけではありません。
筋トレはAGAの直接的な原因ではない!問題はDHTの増加
AGAの発症には、5αリダクターゼの分泌量や男性ホルモン受容体の感度など、さまざまな体質や遺伝的要因が絡み合っています。
テストステロンが多くても、5αリダクターゼの分泌量が少ないと、DHTに変換されにくいといえます。また、テストステロンの増加により、DHTが増えても、男性ホルモン受容体の感度が低ければ、脱毛シグナルが出にくく、AGAリスクは低めです。
たしかに筋トレによってテストステロンは増加しますが、直接DHTの量を増やしAGAを悪化させる作用や、5αリダクターゼの分泌量を増やす作用はありません。AGAの予防や治療をするためには、遺伝的要因などを総合的に判断する必要があります。
5αリダクターゼについて気になる方は下記記事をご覧ください。
DHT(ジヒドロテストステロン)について気になる方は下記記事をご覧ください。
筋トレをする人に人気の「クレアチン」とは?
「クレアチン」とは、筋肉に蓄えられるアミノ酸の一種です。聞いたことがない方もいるかもしれませんが、食品だと牛乳や赤身肉などに含まれる身近な成分です。
筋トレをする方に人気で、サプリやパウダーが販売されています。
参考:
クレアチン – クレアチン – MSDマニュアル プロフェッショナル版
クレアチンに期待できる効果
クレアチンが筋トレをする人に人気なのは、身体能力を向上させたり、筋肉疲労を軽減したりする効果があるといわれているからです。
実際、22 人の若年成人に対して6週間行った研究では、クレアチンを摂取した方が筋力と持久力を高められると示しています。トレーニング日にクレアチンを摂取することで、摂取していない場合よりも良い結果を得られたのです。また、1人の参加者のみ胃腸の炎症を報告しましたが、他の参加者からは有害事象は報告されなかったそうです。
このことから、筋トレをする際にクレアチンを摂取するのは、若年成人の筋力・持久力を高めるために安全で効果的な戦略だと結論付けています。
クレアチンと筋トレの関係
クレアチンを摂取すると、筋トレの効果が向上することが期待できます。その理由は、クレアチンが筋収縮のエネルギーに関係しているからです。
筋収縮のエネルギー源は、「アデノシン三リン酸(ATP)」が「アデノシン二リン酸(ADP)」とリン酸に分解されるときに放出されるエネルギーです。しかし、筋繊維の中にあるATPはわずかなので、激しい運動をするとすぐに尽きてしまいます。
そこで、クレアチンが体内でリン酸化した「クレアチンリン酸」がすみやかに分解されることで、ADPにリン酸基を引き渡し、再びATPを合成します。
つまり、筋収縮のエネルギーを供給するクレアチンを摂取すれば、ATPの再合成をサポートしやすくなります。負荷の強いトレーニングにも耐えやすくなるので、筋トレの効果が向上することが期待できます。
参考:
クレアチンリン酸 / CrP | e-ヘルスネット(厚生労働省)
クレアチンを飲むとはげる?
次に、クレアチンと薄毛の関係です。「クレアチンははげる」という噂がありますが、筋トレと同様に薄毛の直接的な原因になるというエビデンスはありません。
「クレアチンははげる」といわれるようになった理由
筋トレをサポートしてくれるクレアチンがはげるといわれるのは、2009年に報告された「Three weeks of creatine monohydrate supplementation affects dihydrotestosterone to testosterone ratio in college-aged rugby players(クレアチン一水和物サプリメントを3週間摂取すると、大学ラグビー選手のジヒドロテストステロンとテストステロンの比率に影響が出る)」という論文が原因だと考えられます。
こちらの論文では、ラグビー選手20名を対象に、クレアチン群とプラセボ群に分けて比較しました。この結果、クレアチンを7日間補給した選手はDHTが56%上昇したそうです。
クレアチンとAGAの発症についての関係性は明確でない
「クレアチンがDHTを増やすならAGAにも関係するのでは?」と思ってしまいますが、直接的な関係性は明確になっていませんので、ご注意ください。
国際スポーツ栄養学会誌の「Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show?(クレアチン補給に関するよくある質問と誤解:科学的証拠は実際に何を示しているのでしょうか?)」では、前述のラグビー選手を対象にした論文に対し、以下の点を指摘しています。
- DHTの増加・DHTとテストステロンの比率は正常臨床限度内に留まっている
- 補給前では、クレアチン群のDHTはプラセボ群と比較して23%低かった
- 同様の結果は再現されていない
- 激しいレジスタンス運動自体がホルモン増加に関係しているのではないか
さらに、クレアチン補給がテストステロンに与える影響については12件の研究で調査されていますが、クレアチンによってテストステロン・遊離テストステロン・DHTが増加したという結果は得られていないそうです。
このことからも、「クレアチンを飲むとDHTが増加する」という結論は信頼性が欠けているといえるでしょう。AGAとの関係が明確になっていないクレアチンを摂取することに問題はなく、過度に不安になる必要はないと考えられます。
ただ、気になりすぎると精神的なストレスを引き起こし、薄毛・抜け毛につながってしまう可能性があります。心配な方は、クレアチンを積極的に摂取するのは避けた方がいいかもしれません。
プロテインの副作用ではげることはある?
筋トレでの身体づくりをサポートしてくれる「プロテイン」。ですが「プロテインの副作用で抜け毛が増える」と聞いたことのある方もいるのではないでしょうか?
抜け毛のプロテインの関係を、詳しくご紹介します。
プロテインと抜け毛の関係
プロテインには、たんぱく質の他に、ビタミンや必須アミノ酸などの栄養素が配合されたものも多数。筋トレによるボディメイクやダイエットなど、幅広く活用されています。
含まれている成分から考えると、プロテインの使用により抜け毛が増える科学的根拠はありません。
また、髪の主な材料である「ケラチン」はたんぱく質でできています。そのため、プロテインなどで適量のたんぱく質を補給することで、育毛をサポートしてくれます。
プロテインは抜け毛を促進するどころか、適量であればむしろ髪にとってプラスになります。
プロテインにはいくつか種類がありますが、薄毛が気になる場合には「ソイプロテイン」がおすすめです。ソイプロテインは、女性ホルモンである「エストロゲン」と同じような働きをする「大豆イソフラボン」を含んでいます。
大豆イソフラボンは、AGAの原因となる男性ホルモンをおさえる働きがあります。さらに、血液中のコレステロールを減らすなど、血流を改善する作用も。血流が改善されると、発毛や育毛に必要な栄養がいきわたり、薄毛の解消につながります。
「筋トレやクレアチンははげる」は間違い!「DHTが増加した場合はげる確率が高くなる」が正しい
総合的に考えると、筋トレはAGAの直接的な原因ではないが、まったく無関係ともいえないというのが結論ではないでしょうか。また、クレアチンとAGAの発症についての関係性も明確ではありません。
さらに、もし筋トレやクレアチンの摂取によりDHTが増加したとしても、すべての人がAGAの進行につながるわけではありません。「筋トレやクレアチンははげる」というのは間違いで、「DHTが増加した場合はげる確率が高くなる」が正しいといえます。
筋トレをしたいけど薄毛が気になる方は、AGAクリニックで医師に相談して対策するのがおすすめです。薄毛の心配をせずに、トレーニングに励んで、理想のボディを手に入れましょう。
筋トレ・クレアチンではげるわけではないなら原因は?
筋トレ・クレアチンははげの直接的な原因ではないとお伝えしました。では、なぜ薄毛・抜け毛が進行してしまうのでしょうか?
はげる主な原因は、以下の3点です。
- 食事や睡眠などの生活習慣
- 過度なストレス
- AGAなどの脱毛症
はげる原因①食事や睡眠などの生活習慣
髪の毛の生成や成長には、生活習慣が関わっています。食事や睡眠に問題があると、薄毛・抜け毛を引き起こしてはげてしまうかもしれません。
例えば、偏った食事を続けている方は、髪の毛に必要な栄養素が不足しているおそれがあります。また、マウスを対象にした実験では、高脂肪食の過剰摂取が脱毛症を進行させると判明しています。
食事や生活習慣でハゲ予防をする方法については、以下の記事をご参照ください。
参考:
「高脂肪食などによる肥満が薄毛・脱毛を促進するメカニズムの解明」―幹細胞における炎症・再生シグナルの異常が毛包の萎縮を引き起こす―|東京大学医科学研究所
はげる原因②過度なストレス
過度なストレスは、自律神経の乱れを引き起こします。血行不良につながるので、髪の毛に必要な栄養や酸素が届けにくくなり、はげる原因となる可能性があります。
仕事や家庭の問題でストレスの多い日々を送っている方は、注意が必要でしょう。
以下の記事では、ストレスと薄毛の関係を解説しています。ぜひ参考にしてください。
はげる原因③AGAなどの脱毛症
はげる原因の多くは、AGA(男性型脱毛症)だと考えられます。日本人男性の30%程度が発症するといわれているほど身近な脱毛症で、少しずつ症状が進行するのが特徴です。
最初にお伝えしたように、AGAはヘアサイクルの成長期を極端に短くする「DHT(ジヒドロテストステロン)」という男性ホルモンが主な原因です。
AGAの主な原因や解消法は、以下の記事で解説しています。併せてお読みください。
参考:
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版|日本皮膚科学会
はげ・薄毛にお悩みの方はAGAクリニックに相談しよう
はげ・薄毛の症状が現れた場合、原因を特定するのは簡単ではないうえ、自力で改善できるとは限りません。特にAGAを発症していた場合は、対処しない限り薄毛・抜け毛の症状が進行し続けてしまいます。
さらにヘアサイクルには上限があり、毛根が死滅してから対処を行っても治療が難しいケースがあります。早期治療で症状を確実に改善するためにも、はげ・薄毛にお悩みの方はAGAクリニックに相談するのがおすすめです。
毛根が死滅するとはどういうことか、なぜ早期治療が大切なのかは、以下の記事で解説しています。併せてお読みください。
筋トレと薄毛の関係に関するご相談はウィル AGA クリニックへ
もし薄毛・脱毛症に関するお悩みがある場合は、お気軽にウィル AGAクリニックにお問い合わせください。約10万人の治療実績を持つドクターチームが、一人ひとりの症状に合ったオーダーメイド治療をご提案いたします。
【よくある質問】
筋トレによってテストステロンは増加しますが、AGAの原因であるDHTの量を直接増やすわけではないです。