フィナステリドとミノキシジル併用治療は効果的⁈

公開日 / 2020.08.21 更新日 / 2024.08.14

男性の薄毛の原因は、8割がAGA(男性型脱毛症)によるものだと言われています。
AGAを治療する方法としては、治療薬による内服や、直接患部に外用薬を注入するメソセラピー療法など様々です。それぞれ単体で治療をすることもありますが、複数の薬や治療方法を併用して行う方法も注目されています。

今回は、脱毛症治療における併用療法の研究結果を参考にしながら、フィナステリド、ミノキシジルの併用療法の効果をご紹介します。

併用療法を解説

併用療法とは、複数の治療・治療薬を同時や逐次的に行う治療法です。併用療法が行われる主な目的は、単体での治療と比べて有害事象をできるだけ増やさないようにしながら効果を高めることです。

ミノキシジルを用いた併用療法の研究結果

ミノキシジルと他の治療薬,治療方法を併用する効果について、研究結果を紹介致します。

併用療法の研究背景

2020年6月「DERMATOLOGIC THERAPY」に掲載された、「The Effectiveness of Combination Therapies for Androgenetic Alopecia: A Systematic Review and Meta-Analysis」といった論文を参照しております。

AGAは、男性と女性の両方に影響を及ぼす最も一般的な脱毛症です。
AGAに対する併用療法を検討した研究ではミノキシジル外用剤の単剤療法よりも高い有効性が報告されているが、厳密な検討は行われておりませんでした。
著者らはシステマティックレビューをメタアナリシスを実施し、併用療法のエビデンスをさらに検証しました。

併用療法の研究目的

今回の研究では、3つのグループに分けて併用療法の有効性についての研究を行っています。下記①~③の一般的な併用療法の有効性を、ミノキシジル外用剤の単剤療法と比較して評価すること。

①ミノキシジルとフィナステリドを併用
②ミノキシジルと低出力レーザー光治療を併用
③ミノキシジルとマイクロニードルを併用

調査方法

2020年4月までに行われた、AGAに対するミノキシジル外用剤を含んだ併用療法の無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施しました。

併用療法の研究結果・結論

合計1172人のAGA患者を含む15の研究が基準を満たしました。
3つのグループの併用治療を別々にメタ解析を行ったところ、いずれのグループもglobal photographic assessmentにおいてミノキシジル外用剤単剤療法より優れた効果が得られていた(p<0.05)。LLLTやマイクロニードルとミノキシジル外用剤を併用した場合も、ミノキシジル外用剤の単剤治療と比較して有意な毛髪数の増加が認められた(p<0.05)。

本研究は、併用療法がAGAの治療に効果的で安全かつ有望な選択肢であることを示唆していおります。そして、併用療法の有効性をさらに調査・確認するためには、より多くのRCTが必要だと結論づけております。

薄毛治療薬フィナステリドとミノキシジルの効果

上記研究結果からも、ミノキシジルとフィナステリドの併用療法について有効性は証明されております。
フィナステリドとミノキシジルは、AGAに対して異なるメカニズムによって治療効果を発揮します。それぞれの特性を併用することでより高い治療効果が得られると言われています。

では、フィナステリドとミノキシジルのそれぞれの薄毛治療に効果について解説していきます。

フィナステリドの効果

フィナステリドはAGAを進行させる原因となる、ジヒドロテストステロンの産生を阻害する治療薬です。プロペシアという商品名でもよく知られています。

ジヒドロテストステロンは、テストステロンに5αリダクターゼという酵素が働くことで作られることが特徴です。フィナステリドはこの5αリダクターゼの働きを阻害することで、ジヒドロテストステロンが作られないようにします。プロペシアを服用することでジヒドロテストステロンが作られにくくなるため、薄毛の進行を抑制することが可能です。

フィナステリドを用いて414名の被験者に48週間にわたって服用してもらったところ、フィナステリドを1日に1mgを服用したグループでは58%、0.2mgを服用したグループでは54%の方に頭頂部の改善が見られました。

フィナステリドの服用量: 頭頂部の改善効果
1mg/1日: 58%
0.2mg/1日: 54%

引き続きフィナステリド1mgを2年間および3年間にわたって服用してもらったところ、2年服用したグループでは68%、3年服用したグループでは78%の方で頭頂部の改善が見られました。

フィナステリドの服用期間: 頭頂部の改善効果
2年: 68%
3年: 78%

試験の結果を見ると、フィナステリドは用量が多く長い期間にわたって服用を続けるほど効果が出やすくなることが分かります。

他の記事にて、フィナステリドについて詳しく解説しています。
フィナステリドの効果や副作用を解説

ミノキシジルの効果

ミノキシジルはジヒドロテストステロンの産生には影響を与えることなく、ヘアサイクルを正常に戻すことが特徴です。ミノキシジルは血行を促進させて発毛サイクルを整えるという成分です。

ミノキシジルに発毛効果が期待できる理由は、「血行促進」と「毛母細胞の活性化」という2つの効果が組み合わせあり、ヘアサイクルを正常にすることができることから発毛へと繋がるからです。もともとミノキシジルが高血圧の薬として使用されていたのは、ミノキシジルに血管を拡張させる作用があるからです。つまり、ミノキシジルを用いることで血管が拡張されるため、血流が促進されて栄養が髪の細胞に届きやすくなります。
そうすれば、髪が健康に育ちやすくなることから発毛に繋がるのです。

濃度が5%のミノキシジルを使った臨床試験では、使用を始めて16週間後には70.8%の方が毛髪量が増えたと実感しています。毛髪数を実際に調べたところ、使用開始から4週間後では1cm2あたりの毛髪数が1.4本だったのに対して、16週間後には22.3本にまで増えました。

ミノキシジルを使用した期間: 1cm2あたりの毛髪数
4週間後:1.4本
16週間後:22.3本

合わせて毛髪の太さを調べた試験では、ミノキシジルの使用を始めて4週間後では太さが40μm以上の髪の毛は1cm2あたり0.8本しかありませんでしたが、16週間後には26.4本にまで増えています。

ミノキシジルを使用した期間: 1cm2あたりの40μm以上の毛髪数
4週間後:0.8本
16週間後:26.4本

他の記事にて、ミノキシジルについて詳しく解説しています。
ミノキシジルの効果・副作用を解説

フィナステリドとミノキシジルの効果の違い

フィナステリドはジヒドロテストステロンの産生を阻害することでAGAの進行を食い止める、いわば「守りの治療薬」です。一方でミノキシジルはヘアサイクルを整えることで発毛を促す「攻めの治療薬」ということができるでしょう。

薄毛治療薬フィナステリドとミノキシジルの副作用

次に、フィナステリドとミノキシジルにどのような副作用があるのかを見ていきましょう。

フィナステリドの副作用

副作用 発現頻度
リビドー減退 0.7%
射精障害 0.4%
肝機能障害 頻度不明

フィナステリドはジヒドロテストステロンの量を減らす働きがあるため、男性機能に関連した副作用がもっとも起こりやすくなっています。リビドー減退(性欲減退)は1.1%、勃起機能不全は0.7%、射精障害は0.4%の方で見られました。

肝機能障害については頻度不明ですが、重大な副作用として知られているためフィナステリドを長期間にわたって服用する場合は肝機能の検査も定期的に行うことが推奨されています。

ミノキシジルの副作用

副作用が現れる部位 症状
皮膚 発疹、発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、熱感
精神神経系 頭痛、気が遠くなる、めまい
循環器 胸の痛み、心拍が速くなる
代謝系 急激な体重増加、手足のむくみ

ミノキシジルの副作用でよく出やすいのは、頭皮の発疹やかゆみです。またミノキシジルはもともと血圧を下げる薬として開発されていたこともあり、人によっては頭痛やめまいが起こることも知られています。

急激な体重増加に関しては、ミノキシジルとの因果関係が十分には明らかになっていませんが、そういう報告があったということで副作用として掲載しているようです。

まとめ

フィナステリドとミノキシジルは、AGAに対して異なるメカニズムによって治療効果を発揮します。単剤で治療を行っても発毛効果は実証されていますが、併用療法の研究を行ったところ、フィナステリドとミノキシジルを併用することでより高い発毛効果が実証されています。

この記事の監修者
宮内 俊
ウィルAGAクリニック

多数のAGA患者の治療実績から生まれた独自の発毛理論をもとに、表参道ウィルAGAクリニック開院。 2018年5月ウィルAGAクリニックに改名し、全国に展開。千葉大学医学部卒。

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多数のAGA患者の治療実績から生まれた独自の発毛理論をもとに、表参道ウィルAGAクリニック開院。 2018年5月ウィルAGAクリニックに改名し、全国に展開。千葉大学医学部卒。

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