女性の薄毛でお悩みの方へ 皮膚科医が答えます 薄毛の原因と対策!
女性で脱毛に悩まれている方は多いのではないでしょうか。
薄毛の悩みはなかなか相談しにくい場合もあります。日々の髪の毛の手入れのたびに、悩みの種になることも少なくありません。
そのような悩みに対して今回は女性型脱毛症に焦点を当てて、その原因、家庭でできる対策、治療法について解説します。
【Youtubeでも解説中!】
Dr.シュンの発毛チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=WM3-m8R2MYc
1.女性の薄毛とは?その原因は?
(1)女性の薄毛の特徴
①男性の薄毛との違いは?
成人男性の薄毛は、いわゆる男性型脱毛症(AGA)が大半を占めます。AGAは、30代頃から増え始め、前頭部(額の髪の生え際)や頭頂部から脱毛が進むのが特徴です。また、脱毛が進むと、その部位は毛が完全になくなり、いわゆる無毛となります。
一方、成人女性の薄毛は、更年期の頃から増え始め、頭頂部を中心に、全体的に髪が薄くなることが多く、脱毛が進行しても完全な無毛になることは少ないです。
このような、成人女性に多い薄毛を、「女性型脱毛症」と言います。
②女性型脱毛症の診断
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」では、女性型脱毛症の例外ケースを以下のように記載しています。
「女性型脱毛症においては,慢性休止期脱毛,膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛,貧血, 急激なダイエット,その他の消耗性疾患などに伴う脱毛,治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛などを除外することが大切である.」
ガイドラインの用語について解説します。
- 慢性休止期脱毛
頭部全体の毛髪が薄くなる脱毛症です。後述するヘアサイクルの周期のうち、休止期状態の毛が増えることで起こります。原因は様々ですが、膠原病、慢性甲状腺炎、貧血、急激なダイエットなどがあります。
- 膠原病
皮膚や内臓の結合組織(いろいろな組織の間にある膠原線維などからなる部分)や血管に炎症・変性を起こし、さまざまな臓器に炎症を起こす病気の総称です。全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、結節性多発動脈炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群などが含まれます。膠原病に伴って慢性休止期脱毛になることがあります。
- 慢性甲状腺炎
膠原病と類似した自己免疫疾患の1つで、橋本病とも呼ばれます。血液中に甲状腺に対する自己抗体が増えることで、甲状腺が正常に機能できなくなり、甲状腺ホルモンの分泌が低下して様々な症状が出てきます。女性に多い病気です。慢性甲状腺炎に伴って慢性休止期脱毛になることがあります。
- ホルモン補充療法
更年期にホルモンバランスが変化することで生じる更年期障害の様々な症状を、エストロゲンを補うことで改善させる治療法です。ホルモンバランスを変化させることで脱毛が起こることがあります。
医療機関では、症状の確認や血液検査などでそれらを除外した上で、女性型脱毛症と診断されます。
(2)女性の薄毛はどうして起こるの?
①正常なヘアサイクル
髪の毛の成長の周期はヘアサイクルと言われています。ヘアサイクルは、成長期→退行期→休止期の順を繰り返しています。
- 成長期(数年間 頭髪の約85%):
毛根で細胞分裂が繰り返されて、髪が成長する期間
- 退行期(2~3週間 頭髪の約1~2%):
毛根が収縮し、での細胞分裂が停止する期間。
- 休止期(3~4ヶ月間 頭髪の約15%):
退行期で細胞分裂が停止した髪がとどまる期間。
そして、新しい毛が生えて成長期に再び移る時に古い毛は抜け落ちて新たなヘアサイクルが始まります。
②女性の薄毛の場合のヘアサイクル
女性の薄毛の場合、ヘアサイクルが乱れることで薄毛が生じると言われています。具体的には、成長期の期間が短くなることで、毛が十分に成長する前に退行期、休止期に移ってしまうため、毛の量が減少してしまいます。
(3)女性の薄毛の原因は?
前項にありますように、女性の薄毛は、ヘアサイクルの乱れによって起こります。ヘアサイクルの乱れの原因としては以下のようなものがあります。
①髪の栄養不足
髪の栄養は、主に頭皮に流れる血液から供給されます。
そのため、ストレス、疲れ、睡眠不足などによる頭皮の血流の悪化や、食事の乱れによる血液中の栄養分の減少などが、髪の栄養不足につながります。
②頭皮の環境の悪化
毛根には脂腺があるため、頭皮は皮脂が多く分泌します。適度な皮脂によって頭皮の良い状態が保たれます。
頭皮の皮脂が増えすぎても、逆に乾燥しすぎても皮膚炎が生じることがあります。また、刺激の強いパーマー剤やカラーリング剤によって、皮膚炎が起こることもあります。
そのため、頭皮の肌質に合わせて適切な洗髪と、刺激の少ないヘアケアが必要です。
③ホルモンの乱れ
ヘアサイクルの乱れには、ホルモン(特に性ホルモン)が関わっています。
ストレスや疲れ、加齢、ピルなどのホルモン剤の内服などによって、ホルモンバランスが乱れることがヘアサイクルの乱れにつながることがあります。
2.家庭でできる薄毛対策
(1)生活習慣を見直しましょう
①髪に栄養のある食事をとりましょう
髪の毛の主成分はケラチンというたんぱく質です。そのため、たんぱく質をしっかり摂るようにしましょう。
また、髪の毛の細胞分裂や頭皮の環境改善のために、ミネラル(特に亜鉛など)、ビタミン(ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC)を摂ることも必要です。
②適度な睡眠をとりましょう
髪の成長には成長ホルモンが関わっています。成長ホルモンは、自律神経の1つである、副交感神経が良く働くときに多く分泌されます。
副交感神経が良く働く時間は、夜の睡眠時間(特に22時から2時の時間帯)と言われています。
そのため、夜更かしを避けて、夜の睡眠時間をしっかり確保することが髪の成長につながります。
(2)頭皮のケアをしましょう
頭皮の適切なケアが健康な髪の成長につながります。
①頭皮を清潔にしましょう
前項に記載したように、頭皮は皮脂が多く分泌するため、汚れやすいです。そのため、1日1回程度で洗髪することをお勧めします。洗髪の際は、頭皮を傷つけないようにやさしく洗いましょう。
頭皮が乾燥しすぎる場合は、スカルプローションなどで頭皮を保湿しましょう。
②頭皮マッサージをしましょう
頭皮マッサージは、頭皮の血流改善に効果的です。サロンのヘッドスパなどに行くのも良いですが、自宅でシャンプーの際にマッサージをご自身で行う習慣をつけると、毎日手軽に行えます。
(3)育毛剤の使用も効果的です
女性の育毛剤は、多数の商品が販売されています。そのうち、脱毛症のガイドラインで記載されているものについてご紹介します。
①ミノキシジル外用薬
ミノキシジルはもともと血管拡張薬として高血圧の治療に使われていました。その後、発毛効果が認められ、男性型脱毛症の治療薬として使われるようになりました。
女性型脱毛症に対しても発毛促進効果があることが、いくつかの臨床試験で証明されており、市販薬として薬局で販売されています。
注意点としては、ミノキシジルの外用薬は、男性用と女性用で濃度が異なりますので、女性用のものを使うようにしましょう。また、効果を認めるためには、決められた量を決められたタイミングでしっかり継続的に続けることが必要です。
②アデノシン外用薬
アデノシンは、毛乳頭に働き毛母細胞を増殖させる効果があると言われています。女性型脱毛症に対しての有効性ははっきりしていませんが、男性型脱毛症に対して有効性が示されているため、女性用も販売されています。
③その他:カルプロニウム塩化物、t-フラバノン、サイトプリン・ペンタデカンなど
いずれも女性型脱毛に対して明らかな発毛効果は実証されていませんが、女性型脱毛症の診療ガイドラインでは、外用治療を行っても良いということになっています。特に、カルプロニウム塩化物は保険適応もあり、古くから脱毛症に対して広く用いられています。
3.病院での治療は?
(1)まずは女性型脱毛症の診断を行います
前述のように、女性の脱毛症のその他の原因として、膠原病、慢性甲状腺炎などの全身性疾患による脱毛や、貧血、急激なダイエット、その他の消耗性疾患に伴う脱毛、ホルモン補充療法や薬剤による脱毛などがあります。
そのため、上記のような、別の原因がないかをまずはチェックしてもらう必要があります。その上で、女性型脱毛症と診断された場合に、女性型脱毛症の治療が行われます。
(2)女性型脱毛症の治療
女性型脱毛症の場合、様々な選択肢があります。ただし、確実な治癒が期待できる治療法は今の時点ではありません。様々な治療選択肢の中で、お一人お一人に合わせて効果が期待できる治療を選んで行っていくこととなります。
①ミノキシジル外用薬
女性型脱毛症の治療の中では、発毛促進効果が証明されている外用薬です。市販でも販売されていますが、医療機関で効果を確認してもらいながら処方してもらうと安心感があります。
②カロプロニウム塩化物外用薬
血管拡張作用があり、保険適応の外用剤です。女性型脱毛症に対する有効性は実証されてはいませんが、古くから脱毛症に広く用いられてきた外用薬です。
③LED、低出力レーザー
女性型脱毛症診療ガイドラインにおいて、LED および低出力レーザーの発毛効 果は有用性を示す十分な根拠があり、副作用も比較的軽微であることから、適切な機材を使用して行うよう勧めることにするとされていますが、上記の機器は国内ではまだ認可されていないため、治療できる医療施設は限られています。
④HARG療法(毛髪再生療法)
成人の脂肪幹細胞から抽出したタンパク質を冷凍乾燥させたパウダーを溶解し、頭皮に直接注入する治療法です。成人の脂肪幹細胞から抽出したタンパク質には各種の成長因子が含まれているため、毛母細胞や周囲の幹細胞が刺激され、頭皮・毛根の再生を促すと言われています。
⑤内服薬
フィナステリド、デュタステリドなど、男性型脱毛症に対する有効性が証明されている内服薬は、女性型脱毛症には一般的には用いられていません。
女性型脱毛症の内服治療は様々ありますが、頭皮や毛髪の成長を促進させるのに必要な栄養成分(アミノ酸、たんぱく質、ビタミンB群、L-シスチン、ケラチン、D-パントテン酸カルシウムなど)を含む飲み薬などが用いられることがあります。
4.女性の脱毛症に関するご相談はウィル AGA クリニックへ
「薄毛」と一口に言っても、そこには様々な要因が存在します。
適切な原因を探り、改善を行うことが改善への近道といえるでしょう。
薄毛にお悩みの方は、ぜひお気軽にウィル AGAクリニックへご相談ください。