「ピルの服用」は薄毛治療に影響するか?! 治療時のピル服用の注意点とは

公開日 / 2020.08.14 更新日 / 2024.08.14

ピル(経口避妊薬)は、女性ホルモンのバランスを変化させることで効果を発揮します。
ピルには、
・黄体ホルモン(プロゲステロン)
・卵胞ホルモン(エストロゲン)
が含まれています。
これらが、脳下垂体に作用して排卵を抑制することで効果が発揮されます。

ピルと脱毛症とのの関係は、以前から多くの報告があります。
クリニックでも、女性の患者様から脱毛症治療とピルとの併用について質問を頂く機会も多くあります。

薄毛治療を進めていく際に、注意したいピルの選び方について説明します。

ピルの世代別による「違い」と「選び方」

ピルは、第一世代 ~ 第四世代4つに分類されます。
第一世代:「ノルエチステロン」
第二世代:「レボノルゲストレル」
第三世代:「デゾゲストレル」
第四世代:「ドロスピレノン」

第一世代では、黄体ホルモンが主成分です。卵胞ホルモンの作用が弱くなっている分、黄体ホルモンの量が多くなっています。子宮内膜症や、月経困難症に効果が高いことが特徴です。

第二世代では、第一世代に比べて、黄体ホルモンが持つ排卵抑制活性作用が強くなりました。それに伴い、男性ホルモン活性も高くなりました。そのため、ニキビや多毛症などの懸念がありました。
レボノルゲストルという黄体ホルモンと、エチニルエストラジオールという卵胞黄体ホルモンが使用されており、低用量エストロゲンでしっかりとした効果が期待できます。
第二世代では、服用中の不正出血が少ないことや、きちんと月経が来ることが特徴です。

第三世代では、デゾゲストレルやゲストデンという、新しい種類の黄体ホルモンを使用しています。
第二世代の効果を保ちつつ、男性化の副作用を抑えています。このため、第三世代のピルは、ニキビや多毛症にも効果があるのが特徴です。

第四世代のピルには、ドロスピレノンというホルモンが配合されています。
エストロゲンが含まれる量が、他のピルに比べて圧倒的に少ないため、血栓症の副作用が起こる確率が低く、PMS(月経前症候群)に使いやすいのが特徴です。
ドロスピレノンは、男性ホルモンからの合成ではなく、利尿ホルモンから合成されているため、男性化やニキビができる心配もなくなりました。

ピルは、世代別に効果と副作用が違います。

第一世代のノルエチステロンは、低用量ピルの中では女性ホルモンが一番多く含まれています。
飲み初めに、吐き気や頭痛などが副作用が出る影響があります。
また、長期に服用することで男性化症状が起こることもあります。

第二世代のレボノルゲストレルは、第一世代の副作用を軽減されており、吐き気や頭痛などは少なくなります。男性化症状は出やすくなります。
薬剤の効果を分散しやすくした3相性のピルを使用することで、男性化症状を少なくすることが可能です。

第三世代のデゾゲストレルでは、第一世代と第二世代の副作用で問題となっていた男性化作用を少なくしています。
そのため、ニキビや肌荒れなどにも効果があります。
1相性のものが多いため、常にホルモンの量が一定となり、ホルモンの増減が原因で起こる月経前症候群のイライラ軽減にも効果的です。

第四世代のドロスピレノンは、男性化作用の副作用も、吐き気や頭痛などの副作用がほぼありません。
他の世代のピルと同等の避妊効果がありますが、一つ欠点として、血栓が起こりやすいといった点です。
そのため、35歳以上の人や、煙草を吸う人はこの世代の薬剤は避けることをオススメしております。

ホルモンバランスの崩れとびまん性脱毛症

女性のピル服用に対して、脱毛症治療の影響を考える上で重要なキーワードは「女性ホルモン」です。
上記で説明してきたように、ピルはホルモンのバランスを調整する役割があります。そして、女性の脱毛に影響を与える主要因はホルモンバランスの変化です。
ピルが女性の脱毛症に影響について理解を深めるために、女性の脱毛症の特徴を解説します。

「びまん性脱毛症」って何?女性に多い理由はとは

「びまん性脱毛症」とは、広範囲に渡って頭部全体の毛が薄い状態のことを言います。分け目を中心に薄くなる場合もあります。男性の脱毛症に多く見られる特徴が「M 字はげ」「つむじはげ」であるのに比べて、女性の脱毛症の特徴は「びまん性脱毛症」です。

びまん性脱毛症が進行する原因は様々と言われていますが、原因の一つは「FAGA(女性の男性型脱毛症)」です。
FAGAは、加齢によって女性ホルモンが低下し、相対的に男性ホルモンが優位となり、ホルモンバランスが崩れて起こる症状です。

女性は、卵巣から女性ホルモンを分泌しています。また、副腎からは男性ホルモンを分泌しています。
しかし、40歳を過ぎたあたりから、女性ホルモンの分泌は徐々に減少します。相対的に男性ホルモンの比率が上がることでバランスが崩れやすくなります。
その結果、FAGAが発症し、頭頂部の毛髪数が減少したり、細くなるといった変化が起きやすくなります。

ピルの作用は薄毛治療に悪影響を与える??

結論から申し上げますと、「ピルにより女性の脱毛症が進行する」という因果関係は明確に言及されていません。
ただし、脱毛症治療と第二世代ピルの服用を平行するのには注意が必要と考えます。

第二世代ピルの特徴は?男性化作用が強いとは?

第二世代のピルは、3相性となっており、初めは少ないホルモン量から始め、三段階に分けて徐々にホルモン量を増やしていきます。
そのため、副作用も比較的緩和され、効果も高いとされています。
しかし、第二世代のピルは、アンドロゲン作用と言って、男性化する作用が強いという特徴があります。
一番男性化しやすいピルとも言えます。

「第二世代ピル」と「スピロノラクトン」とは相性が悪い!

第二世代ピルはアンドロゲン作用が他より強いため、スピロノラクトンと相性は悪く

「スピロノラクトン」は脱毛症治療薬として処方される治療薬です。もともと高血圧の薬です。Kを保ちながら、尿を出すことで血圧を下げる作用があります。
しかし、別の作用として、アンドロゲンが結合する場所にも働き、アンドロゲンの効果をブロックしてしまいます。
スピロノラクトンは、内服量が多いと、排卵を抑制する作用があります。
生理不順や、不正出血を起こすこともあるため、アンドロゲン作用とスピロノラクトンの併用には注意が必要です。

薄毛治療時にお勧めするピルはあるのか?!

薄毛治療には、第3世代、第4世代のピルがお勧め!

ピルには、エストロゲンを増やす働きがあります。
女性ホルモンであるエストロゲンには、髪の毛の成長を促進する働きがあります。ピルを服用している間は、薄毛にも効果的と言えます。

世代別では、アンドロゲン作用の副作用を抑えた第3、第4世代がお勧めです。
第3世代では、男性ホルモンの作用を弱くすることが出来ています。さらに、エストロゲン効果も加わることで、薄毛治療には効果的だと考えられます。
第4世代では、男性ホルモン作用がなくなり、抗男性ホルモン作用も期待できるため、こちらも薄毛治療には向いています。

まとめ

基本的には、ピル自体は薄毛の増加や抜け毛の抑制をもたらすと考えられています。そのため、逆に服用を止めることで抜け毛や薄毛が進行することがあります。
しかし、その一方では、ピルによって生じたと考えられる脱毛症も論文で報告されており、一概に原因を特定することはできません。
食生活や睡眠の見直しが必要な場合もあるため、専門医に相談することをお勧めします。

この記事の監修者
宮内 俊
ウィルAGAクリニック

多数のAGA患者の治療実績から生まれた独自の発毛理論をもとに、表参道ウィルAGAクリニック開院。 2018年5月ウィルAGAクリニックに改名し、全国に展開。千葉大学医学部卒。

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多数のAGA患者の治療実績から生まれた独自の発毛理論をもとに、表参道ウィルAGAクリニック開院。 2018年5月ウィルAGAクリニックに改名し、全国に展開。千葉大学医学部卒。

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