「抜毛症(トリコチロマニア)」とは?脱毛した部分は自然復活するのか
「抜毛症(トリコチロマニア)ってどんな病気?」
「髪の毛を自分で抜きすぎてはげた…」
抜毛症(トリコチロマニア)とは、体毛を繰り返し抜いてしまう病気です。精神疾患の一種で、抜く行為をやめたくてもやめられないのが特徴です。
この記事では、抜毛症(トリコチロマニア)を発症する原因や症状、改善方法などを解説していきます。抜毛の衝動に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
目次
抜毛症(トリコチロマニア)は体毛を引き抜くのが癖になる病気
抜毛症(トリコチロマニア)とは、髪の毛や眉毛、まつ毛などの体毛を繰り返し抜く精神疾患です。
「白髪が気になるから」
「指のムダ毛が嫌だから」
といったように、美容目的で体毛を抜くのとは異なります。満足感や快楽のために毛を抜いたり、無意識に行ったりします。
参考:
皮膚・毛髪への“身体集中反復行動”─抜毛症,皮膚むしり症,皮膚の掻破行動─
抜毛症(トリコチロマニア)は精神疾患
抜毛症(トリコチロマニア)は、精神疾患の一種です。
髪やまつ毛が薄くなって精神的な苦痛を感じたとしても、抜毛行為をやめることはなかなかできません。一方、髪や頭皮に問題があるわけではないため、抜くことをやめれば通常は再び毛が生えてきます。
アメリカ精神医学会が作成した精神疾患の診断・統計マニュアル「DSM-5」では、「強迫症および関連症群」に分類されています。改定前のDSM-IVにおいては「衝動制御の障害」に分類されていましたが、「やめたくてもやめられない」という強迫性が本質であることを踏まえて変更されました。
抜毛症(トリコチロマニア)の患者さんの9割近くは女性
抜毛症(トリコチロマニア)は、女性に多い病気だとされています。
1000人を対象にした日本抜毛症改善協会の調査によると、抜毛症を発症している男性は11.9%、女性は88.1%だったそうです。抜毛症(トリコチロマニア)の9割近くが女性だと考えると、性別によって発症率が大きく変わる病気だと言えます。
ただし、女性は薄毛による社会的ダメージを受けやすいことから、男性より受診するケースが多いという可能性も指摘されています。また、抜毛症(トリコチロマニア)の発症率は、小児期早期の場合だと性差がないと言われています。
参考:
2023年6月度抜毛症統計 | 一般社団法人 日本抜毛症改善協会
抜毛行動を有する学齢期小児への治療アプローチ
抜毛症(トリコチロマニア)は生涯続くこともある
抜毛症(トリコチロマニア)は、抜毛をやめたくてもやめられないのが大きな特徴です。抜くことを繰り返したり、体毛が薄くなったりして苦痛を感じていても、自らの意思では我慢できません。
特に、適切な治療を受けない場合は、生涯続く可能性もある病気です。
「単なる癖だから」
「相談するのが恥ずかしいから」
といって受診を控えず、症状に悩んだらすぐに医療機関に相談するようにしましょう。
「円形脱毛症」との違い
抜毛症(トリコチロマニア)と混同されるケースがあるのが、「円形脱毛症」です。
円形脱毛症とは、髪の毛が円形や楕円形に抜ける病気です。円形脱毛症の原因は免疫異常だと言われていて、髪を作る細胞の「毛包」を異物と認識して攻撃してしまうことで髪の毛が抜けます。
抜毛症(トリコチロマニア)は自ら体毛を抜く精神疾患ですが、円形脱毛症は毛包周辺に炎症を起こす自己免疫疾患だという違いがあります。
ただ、自覚のない抜毛行為で髪の毛を円形に抜いた場合、抜毛症(トリコチロマニア)ではなく円形脱毛症だと勘違いしてしまうケースもあります。
円形脱毛症の原因や治療法については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。
抜毛症(トリコチロマニア)になる原因
抜毛症(トリコチロマニア)の発症には、ストレスや不安が関係していると考えられています。
体毛を抜くことで一時的に気持ちが和らぐ方もいますが、抜毛をやめられないこと・体毛が薄くなることによって、さらにストレス・不安を感じる場合があります。ストレスが抜毛症を生み、抜毛症が見た目の悪化を生み、それがまたストレスになるという悪循環に陥る前に、医療の力を借りてください。
毛を抜くだけで治まらない?抜毛症(トリコチロマニア)の症状
抜毛症(トリコチロマニア)は自ら体毛を抜く病気ですが、場合によっては毛を抜くだけでは治まらずにそのまま食べてしまうこともあります。
抜毛症(トリコチロマニア)の主な症状は、以下の3点です。
- 体毛を抜く行為がやめられずに繰り返す
- 体毛が薄くなり苦痛を感じる
- 抜いた毛を食べることがある(食毛症)
抜毛症(トリコチロマニア)の症状①体毛を抜く行為がやめられずに繰り返す
抜毛症(トリコチロマニア)は、体毛を抜いてしまうのが主な症状です。髪の毛や眉毛、まつ毛、腕毛など、あらゆる体毛が抜毛の対象になります。やめたいと思ってもやめられず、何度も抜毛行為を繰り返してしまいます。
体毛を抜くときには満足感や快楽、安心感を感じる方がいるほか、無意識に行う方もいます。
抜毛症(トリコチロマニア)の症状②体毛が薄くなり苦痛を感じる
抜毛症(トリコチロマニア)を治さないままでいると、繰り返し毛を抜くことで体毛が薄くなっていきます。抜毛の対象となった部位によっては、精神的苦痛を感じる可能性があります。
「髪の毛を抜きすぎて一部がはげてしまった」
「まつ毛が全部なくなった」
といったケースでは、周囲の視線が気になって日常生活に支障をきたす恐れがあるでしょう。また、ストレスや苦痛から症状が悪化する可能性もあります。
抜毛症(トリコチロマニア)の症状③抜いた毛を食べることがある(食毛症)
抜毛症(トリコチロマニア)は、抜いた毛をそのまま食べてしまう場合があります。毛を噛んだり飲み込んだりする精神疾患を「食毛症」と言い、抜毛症(トリコチロマニア)と併発することが多いとされています。
飲み込んだ体毛の量によっては消化しきれず、手術が必要になるケースもあります。
毛髪胃石(もうはついせき)になるケースもある
「毛髪胃石(もうはついせき)」とは、繰り返し食べた毛髪に胃液が作用して固形物になり、胃の中に残存したものです。
毛髪胃石が大きいとそれだけ胃腸に影響を及ぼすため、腹部症状を示すようになります。
毛髪胃石が成長すると小腸にまで達して消化管閉塞を引き起こす可能性があり、これを「ラプンツェル症候群」と言います。胃から腸まで毛髪の塊が伸びている様子から、グリム童話のラプンツェルという髪の長い少女にちなんで名づけられました。
ラプンツェル症候群は非常にまれな病気で、文献上でも50例程度しか報告されていません。
参考:
腸閉塞をきたした毛髪胃石の 1 例|国立病院東京医療センター外科
抜毛症(トリコチロマニア)による脱毛状態は自然と復活するのか
抜毛症(トリコチロマニア)を発症すると気になるのが、体毛が抜けて薄くなった状態です。髪の毛やまつ毛、眉毛が薄いと、周囲から変に思われるのではないかと不安に感じてしまう方が多いでしょう。
抜毛症による脱毛は、ヘアサイクルや頭皮に問題があるわけではないので、毛を抜くことをやめれば自然と復活する可能性があります。
しかし、治療を受けなければ抜毛症の症状は悪化するので、脱毛状態も改善しません。
抜毛症(トリコチロマニア)はやめたくてもやめられないのが特徴です。せっかく新しい毛が生えてきても、毛を抜く行為自体が続けば脱毛状態は治りません。また、繰り返し抜くことで毛根が死滅したり休眠したりして、新しい毛が生えなくなるおそれもあります。
症状が軽いうちに脱毛状態を改善するために、まずは精神科・心療内科を受診して適切な治療を受けることが大切です。
毛根の死滅や休眠については、以下の記事で詳しくお伝えしています。気になる方は併せてお読みください。
髪の毛を生やしたい!抜毛症(トリコチロマニア)の改善方法
抜毛症(トリコチロマニア)で髪の毛やまつ毛を抜いてしまい、再び毛を生やしたいと考えている方も多いでしょう。
抜毛症(トリコチロマニア)の改善方法は、主に抗不安薬などの薬物療法と認知行動療法です。体毛を抜く行為自体をやめることで、脱毛状態の改善を目指します。
抜毛症(トリコチロマニア)の改善方法①抗不安薬などの薬物療法
患者様の状態に合わせ、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることがあります。
抜毛症(トリコチロマニア)は、主にストレスや不安によって発症すると言われています。抜毛行為を引き起こしている原因に対して薬物療法でアプローチすることで、改善していく可能性があります。
抜毛症(トリコチロマニア)の改善方法②認知行動療法
「認知行動療法」とは、ものの受け取り方や考え方に働きかけ、気持ちを楽にする精神療法です。抜毛に関する認知を変えることで、ストレスや不安を軽減します。
抜毛症に対しては、「習慣逆転法」が効果的だと言われています。体毛を抜いているという行為を意識したうえで、新しい習慣を身につけるという方法です。
抜毛行為とは同時に行えない、
「こぶしをにぎる」
「親指と人差し指で輪をつくる」
といったような行為で衝動を抑えます。
帽子やウィッグを活用するのも大切
抜毛症(トリコチロマニア)が改善できたとしても、一度抜いた髪の毛が再び生えてくるまでにはある程度の時間が必要です。新しい髪の毛が成長する間、帽子やウィッグを活用して脱毛状態を隠すというのも手です。
人に会ったり外出したりすることに恐怖を感じると、さらにストレスがかかる可能性があります。脱毛部位や生活スタイルに合わせ、上手な付き合い方を模索しましょう。
「髪の毛を抜きたい」と強く思ったら受診を検討しましょう
抜毛症(トリコチロマニア)の原因や症状、改善方法などをお伝えしました。
抜毛症(トリコチロマニア)は、体毛を自ら抜く精神疾患です。ストレスや不安が原因だと考えられていて、抜毛行為をやめたくても自分の意志ではやめられません。放置するとストレスによって悪化する可能性もあるので、症状にお悩みの方は医療機関を受診しましょう。
新宿うるおいこころのクリニックは、臨床心理士の資格を持つ専門カウンセラーが在籍している精神科・心療内科です。患者様一人ひとりの想いに寄り添い、最適なオーダーメイドの治療法をご提案いたします。
当日でも初診受付を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
また、ウィルAGAクリニックは薄毛・AGA治療に特化した専門のクリニックです。
抜毛症(トリコチロマニア)による抜け毛・薄毛を改善したい方は、当院にお問い合わせください。
【よくある質問】
ストレスや苦痛を感じても抜毛をやめられないのが特徴で、女性に多い病気だとされています。
体毛を抜くことによって安心感や快感が生じますが、抜毛によってさらにストレス・不安を感じて悪化するおそれがあります。