「抜毛症」で脱毛した部分は自然復活するのか
抜毛症とは、どうしても毛を抜くことをやめられない症状のことを指します。
抜毛症は精神障害の1つで、強迫症の一種です。単なる癖で終わっている場合は、抜毛症とは呼びません。抜毛症が治まれば、脱毛した部分が自然復活する可能性はありますが、抜毛症の治療は簡単ではありません。
目次
抜毛症とは何か。症状は。
強迫症とは、よくない癖であると知りながらやめることができない症状の総称です。抜毛症の患者さんは、毛を抜く前に緊張や不安といったストレスを受け、自分の毛を抜くことでそのストレスが和らぐと考えています。
生涯続くこともある
抜毛症が悪化すると、毛髪がほとんどなくなるほど抜いてしまいます。「抜くのをやめよう」と思ってもやめることができず、それがさらに新たなストレスになります。
ただ、毛を抜くことで安心感を得ている人もいます。
そして無意識に抜いている人と、抜いている意識がある人がいます。
この症状は生涯続くこともあります。
抜く毛は、頭髪の他、眉毛や睫毛が多く、そして全身の毛を抜くこともあります。
患者さんの9割は女性
抜毛症は思春期の直前または直後に発症することが多く、発症確率は1、2%です。
患者さんの90%は女性とされています。
毛を抜くだけで治まらないこともある
さらに悪化すると、抜いた毛の房を歯で噛んだり、飲み込んだりすることもあります。飲んだ毛が胃に留まるとそれが固まってしまい、満腹感、吐き気、嘔吐、腹痛などを引き起こすことがあります。
そして、抜く毛がなくなってしまうと、皮膚をかきむしったり、爪や頬の内側を噛んだりといった、自分の体を傷つける行為に進んでしまうこともあります。
抑うつ症状がみられることもあります。
抜毛症になる原因
抜毛症の原因はストレスとされています。ただ、なぜストレスが毛を抜く行動を起こすのかはわかっていません。
また、女性の場合、月経の終期に合わせて症状が悪化したり改善したりすることがあるため、ホルモンが関係しているとの説もあります。
抜毛症による脱毛状態は自然と復活するのか
抜毛症による脱毛は、ヘアサイクルが悪化しているわけではないので、毛を抜くことをやめれば自然と復活する可能性があります。
しかし、治療を受けなければ抜毛症の症状は悪化するので、脱毛状態も改善しません。
抜毛症の患者さんも、毛がなくなることで外見が悪化することを苦にしています。そのため、精神衛生上も、毛が復活したほうがよいはずです。
抜毛症の患者さんは、精神科などの専門の治療を早期に受けたほうがよいでしょう。
抜毛症の改善方法
抜毛症の改善方法は、医療の力を借りることです。
治療法には薬物療法と認知行動療法があります。
抜毛症の患者さんに使われる薬
抜毛症の患者さんには、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」や「クロミプラミン」といった抗うつ薬が処方されることが多いでしょう。
抜毛症の患者さんに対して行なわれる認知行動療法
認知行動療法とは、正しい行動を認識させて、間違った行動を減らしていく治療法です。
抜毛症の患者さんに対しては、まず、自分がしている毛を抜く行為を自覚してもらいます。つまり、抜毛症の患者さんでも、常に毛を抜いているわけではありません。そこで、抜いているときと抜いていないときを知ってもらうわけです。
次に、どのようなときに毛を抜くのか探ります。そして特定のストレスが生じたときに抜毛症が発生することがわかったら、そのストレス要因を取り除きます。
さらに、毛を抜きたくなったら、別の行為をするように訓練します。例えば、こぶしを握る、手をお尻の下に置いて座る、編み物をするといったことをします。
この訓練により、ストレスが起きたら、例えばこぶしを握るようになるので毛を抜かなくなります。
まとめ~強く「抜きたい」と思ったら受診を検討しましょう
抜毛症は精神疾患なので、医療機関に行けば治療できるかもしれません。そして毛を抜く習慣が単なる癖でなく抜毛症であれば、医療機関でなければ治すことはできません。
ストレスが抜毛症を生み、抜毛症が見た目の悪化を生み、それがまたストレスになるという悪循環に陥る前に、医療の力を借りてください。
また、抜毛症は周りの人でも気がついてあげることができるので、やんわりと受診をアドバイスしてあげてみてはいかがでしょうか。