脂腺母斑の痕は植毛できる?植毛の注意点は?
「脂腺母斑(しせんぼはん)」とは、皮脂を分泌する組織である「脂腺」や過剰な上皮が集まってできた「母斑(いわゆる、あざ)」です。
脂腺母斑の多くは頭皮にできます。
脂腺母斑は手術で取り除くことが多いですが、手術した痕の部分は髪の毛が生えてこなくなってしまうことがあります。
そのため、手術の場所によっては脱毛が目立って気になります。
手術の痕を目だ立ちにくくする治療法があります。それは、「植毛」です。
現在、脂腺母斑を含め、様々な手術の痕の脱毛部を植毛することで目立ちにくくする治療は多くの医療機関で行われています。
今回は脂腺母斑の手術の痕への植毛について解説します。
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目次
1.脂腺母斑とは?原因や癌化のリスクについても解説!
(1)脂腺母斑とは?
脂腺母斑は、脂腺が集まったあざで、約60%が頭皮にできます。
生まれつきである場合が多く、子供の頃の脂腺母斑は平坦で黄色っぽい色をしています。
脂腺母斑は新生児の約0.1~0.3%にあると言われています。
体の脂腺が発達する思春期になると、脂腺母斑の脂腺も発達してイボ状に膨らんでくることがあります(脂腺母斑の約20%程度)。
30歳以降になるとそのうちの一部が皮膚癌(基底細胞癌など)になるリスクがあると言われています。
皮膚癌になるのは30歳以降で切除した例のうち15~20%程度です。
参考:日本形成外科学会
(2)脂腺母斑の治療
前述のように、脂腺母斑は放っておくと皮膚癌になるリスクがあるため、なるべく30歳までには切除することがすすめられています。
切除する時期の判断は、脂腺母斑の大きさや受診する医療機関によって異なることがあります。
全身麻酔が必要な子供の頃に切除する場合と、局所麻酔ができるようになる小学生高学年以降に切除する場合に大きく分かれます。
脂腺母斑は手術で完全に取り除いてしまえば再発や癌化のリスクはありません。
2.脂腺母斑の手術の痕の植毛
(1)自毛植毛とは
脂腺母斑の主な治療は手術による切除になります。
手術の傷跡の部分は髪の毛が生えてこないため目立ってしまうことがあります。
このように、手術の傷跡ややけどなどが原因で髪の毛の毛根が失われて髪の毛が生えてこない脱毛を「瘢痕性脱毛(はんこんせいだつもう)」といいます。
瘢痕性脱毛の治療の選択肢として「自毛植毛」があります。
自毛植毛は、自身の健康な部分の髪の毛を毛根ごと脱毛部に移植する治療です。
自毛植毛には主に次の2つの方法があります。
・FUT法:健康な髪の毛の部分からメスで頭皮ごと帯状に切り取って、切り取った皮膚を1本1本の毛根単位に分けてから移植先に植え込む方法。
FUE法よりも広い面積の移植がしやすい。頭皮を切り取った部位の傷口は縫って閉じる必要がある。
・FUE法:1ミリ程度のくりぬきメスを使って毛根単位で切り取って、切り取った皮膚を移植先に1本単位え植え込む方法。
FUT法よりも手間がかかる。切り取った部位の傷口は小さくなる。
FUT法では、瘢痕性脱毛の治療のために移植元に新たな瘢痕性脱毛部位を作ってしまうリスクがあるため、瘢痕性脱毛部位の移植にはFUE法が使われることが多いです。
(2)脂腺母斑の植毛とその注意点
脂腺母斑の手術痕の植毛には前述のように自毛植毛のFUE法が用いられることが多いです。
植毛における注意点について以下にあげます。
・髪の毛が生えるのには時間がかかるため、植毛が成功しても脱毛部が目立ちにくい程度までの発毛を認めるまでには1年程度はかかります。
ただし、植毛が成功すればその後は追加の治療をする必要はありません。
・脂腺母斑の手術痕は瘢痕であるため、他の皮膚よりも血行が悪くなっています。
そのため、植毛の成功率は瘢痕でない部位よりも低くなります。
・血流不足による植毛の失敗を避けるため、何回かに分けて少しずつ毛根を移植する場合もあります。
・植毛の費用は植毛をする面積・移植する毛根数と医療機関によって異なりますが、20万~80万程度が目安となります。
脂腺母斑の手術痕の脱毛が気になる場合は医療機関にご相談されることをおすすめします。