爪がデコボコになる”爪甲点状陥凹”は円形脱毛症のサイン?原因を解説
指先を軽くぶつけただけでも爪のデコボコはできるものです。
加齢によって縦線ができることも良く知られています。
ただ、爪の表面に、ぽつぽつと点のようなへこみが出ている場合は要注意。
このデコボコは「爪甲点状陥凹」とよばれ、円形脱毛症などを発症している場合があります。
今回は、爪甲点状陥凹の原因や円形脱毛症との関係性、そして気になる予防法を詳しく解説していきます。
目次
1.爪甲点状陥凹とは
(1)爪の表面に小さな点状のへこみができる状態
爪甲点状陥凹とは、爪の表面が点を打ったような形にへこんでいる状態をいいます。
ストレスなどによる免疫異常を原因として起こるとされています。
(2)爪甲点状陥凹と円形脱毛症の関係性
円形脱毛症も、爪甲点状陥凹とおなじく、免疫系の異常によって引き起こされます。
そのため爪の凹みと円形脱毛症は併発することが多く、診断のひとつのガイドラインにも定められています。
爪にも変化をみることがあり,最も多いのは爪甲の小さな点状陥凹で,発症時や再燃時期に一致して横一列線状に並ぶこともある。
引用元:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
(3)よく似たものとの見分け方
爪甲点状陥凹だけでなく、爪の異常にはさまざまなものがあります。
よく似たものとの原因と違いについて解説します。
※これらの特徴はあくまでも一般論です。爪に異常がある場合は自己判断せず、必ず医療機関にかかるようにしてください。
①縦に筋のようなものが入る
加齢や水仕事などによって爪が乾燥することで起きる状態です。
健康上特に問題はありませんが、見た目が気になるようであれば、美容液やハンドクリームなどを使ってケアをしてあげましょう。
②爪が柔らかくなり、デコボコになる
感染症やアレルギーなどによって爪の弾性が失われ、表面がでこぼこになる場合もあります。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と呼ばれるもので、「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質の一種が原因となって引き起こされます。
爪だけでなく、手のひらや足の裏に水ぶくれなども起きます。
③爪が変形し、白っぽくなる
原因にはさまざまなものがありますが、一般的なものとして爪白癬(つめはくせん)と呼ばれるものがあります。
これは真菌と呼ばれる菌の感染によって引き起こされるもので、いわゆる「水虫」が爪に起きた状態です。
またその他にも、仕事などで日常的に爪に負荷がかかることで起きる「スプーン爪」などの場合もあります。
2.爪甲点状陥凹・円形脱毛症が起きるメカニズム
爪甲点状陥凹と円形脱毛症は、共に免疫の異常によって引き起こされます。
より詳しいメカニズムについて見ていきましょう。
(1)爪甲点状陥凹のメカニズム
爪甲点状陥凹は、「尋常性乾癬」と呼ばれる疾患のひとつに分類されます。
これは人間の免疫システムの異常により引き起こされるとされています。
なかでも原因とされている細胞のひとつが「Th17」と呼ばれる細胞。
この細胞は、外部の病原体から身体を守る「T細胞」の一種で、サイトカインと呼ばれるタンパク質を分泌することで、身体の防衛反応を誘導したり、細胞を活性化したりする役割を持ちます。
特にTh17が分泌する「IL-17」と「IL-22」と呼ばれるサイトカインは、皮膚に作用して次のような効果を引き起こします。
IL-17→抗菌性物質の生産をうながす
IL-22→抗菌性物質の生産をうながす+細胞の分化や生存に関わる分子の生産を促進する
一方で、なんらかの異常によってTh17が増えすぎてしまうと、IL-17やIL-22が生産されすぎてしまい、炎症を引き起こしたり皮膚や爪となる細胞(角化細胞)が異常に増えてしまったりします。
これにより、皮膚や爪に異常があらわれるのです。
(2)円形脱毛症のメカニズム
円形脱毛症のメカニズムについてはまだハッキリとわかっていませんが、爪甲点状陥凹と同じく「Th17」の存在が影響しているとみられています。
東北大学が2012年に行った研究では、円形脱毛症で髪が抜けた場所付近の毛包(毛根を包んでいる部分)では、多くの細胞がIL-17による影響を受けていることがわかっています。
爪と髪という一見離れた場所で起きる症状ですが、いずれも共通の細胞が生む物質(サイトカイン)によって引き起こされることから、同時に発症しやすいと考えられています。
また2020年7月、東海大学総合医学研究所が円形脱毛症の原因となる遺伝子を同定したことも報じられました。
参考:総合医学研究所の岡講師らが世界で初めて円形脱毛症の原因遺伝子を同定し、医学雑誌『EBioMedicine』オンライン版に論文が掲載されました(東海大学)
この遺伝子の発現を抑えることによって、円形脱毛症の治療・予防ができるのではないかと期待されています。
3.爪甲点状陥凹、円形脱毛症の治療・予防法
爪甲点状陥凹、円形脱毛症はいずれも、免疫系の異常による疾患で、遺伝によっても大きく左右されます。
もし発症した場合は、Th17をはじめ原因となる免疫を抑えるなどして治療を行っていく形となります。
(1)爪甲点状陥凹(尋常性乾癬)の治療法
塗り薬・軟膏を使う外用治療、光を当てる紫外線治療、薬を飲む内服薬治療が行われています。
①外用治療
塗り薬を患部に塗ることによる治療法です。
活性型ビタミンD3やステロイドを、単体、または組み合わせて使います。
このとき、乾癬が起きているのが、爪の根本(爪母)なのか、爪の下にある皮膚(爪床)なのかによって、薬を塗る場所が変わってきます。
爪母の場合は、爪の付け根部分に薬を塗りますが、爪床の場合は直接薬を塗ることが困難です。
なるべく爪を短く切り、軟膏などを塗りこむといった工夫が必要になります。
②紫外線療法
乾癬の治療法として一般的ですが、爪乾癬に関しては皮膚科学会のガイドラインでも効果が結論づけられていません。
③内服薬治療
シクロスポリン、エトレチナート、アプレミラストといった免疫抑制・調整の効果のある薬を内服することで治療を実施します。
ただし、内服には腎臓の機能低下などといった副作用もあるため、事前に医師からの説明を受けて治療に同意する必要があります。
(2)円形脱毛症の治療法
円形脱毛症の場合、乾癬と同じく塗り薬による外用治療のほか、ステロイドの注射や意図的に炎症をおこさせる「局所免疫療法」と呼ばれる治療法もあります。
①外用治療
ステロイドや塩化カルブロニウムなどを塗る方法です。
脱毛している範囲が広くない場合に用いられます。
②ステロイド注射
脱毛した場所にステロイドを直接注射する方法です。
塗るだけでは効果が見られない場合などに行われます。
一方で、注射した範囲にのみ作用するので、広範囲にわたって脱毛している場合には向きません。
③局所免疫療法
これは円形脱毛症が起きた部分に「SADBE」や「DPCP」と呼ばれる物質を塗ることで意図的に炎症を起こし、発毛をうながす方法です。
脱毛箇所が広範囲であっても対応可能なほか、ステロイドなどが効かない場合でも効果がある場合があります。
いっぽうでこの方法は保険適用外となる点や、炎症をおこすためかゆみが発生する点などには注意が必要です。
また、円形脱毛症がストレスなどによる一時的なものである場合は、あえて治療をしないということもあります。
アトピー性疾患などのない円形脱毛症1,716 例のうち、1,263 例は1年以内に完治したというデータもあります(Ikeda T: A new classification of alopecia areata, Dermatologica, 1965; 131: 421―445.(レベル IV))。
(3)爪甲点状陥凹(尋常性乾癬)や円形脱毛症を予防するには?
爪甲点状陥凹や円形脱毛症はいずれも、免疫システムの異常が主な原因です。
遺伝によって引き起こされる場合もありますが、ストレスや生活習慣の乱れ、栄養の偏りなどによって発症しやすくなります。
そのため、睡眠時間の確保や規則正しい食生活といった生活習慣に気を付けることが、事前の予防につながります。
4.爪甲点状陥凹と円形脱毛症に関するご相談はウィル AGA クリニックへ
もし薄毛・脱毛症に関するお悩みがある場合は、お気軽にウィル AGAクリニックにお問い合わせください。
薄毛に悩む方が一人でも多く悩みから解放されるよう、
全力でサポートしていくことをお約束します。