甲状腺の病気で円形脱毛症に?橋本病など自己免疫疾患との関係を解説

更新日 / 2025.05.09

「甲状腺疾患ってどんな病気なんだろう…」
「甲状腺疾患と円形脱毛症が合併しやすいのはなぜ?」

甲状腺は、新陳代謝を促進させるなどの働きを持つ「甲状腺ホルモン」を分泌する臓器です。甲状腺の異常や障害によって起こる「甲状腺疾患」は、円形脱毛症を合併しやすいことで知られています。
この記事では、甲状腺疾患にかかると脱毛してしまう原因や、円形脱毛症を合併しやすい理由を解説していきます。甲状腺疾患の代表とも言えるバセドウ病や橋本病についてもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

甲状腺ホルモンの異常による「甲状腺疾患」とは?

喉を押さえる女性

甲状腺疾患とは、甲状腺の異常や障害によって起こる病気です。
甲状腺はのどぼとけの下に位置しており、蝶が羽を広げたような形をしています。新陳代謝の促進や脈拍・体温の調整などの働きがある「甲状腺ホルモン」を分泌する大切な臓器です。
様々な役割を持つ甲状腺ホルモンは生命維持に欠かせず、多すぎても少なすぎても良くありません。

自己抗体や腫瘍、炎症などの影響を受けると、甲状腺ホルモンのバランスが崩れることがあります。分泌量が過剰になったり少なくなったりするため、心身の不調を招きます。
甲状腺ホルモンが増えすぎた場合は「甲状腺機能亢進症」、逆に甲状腺ホルモンが少なくなる場合は「甲状腺機能低下症」と言います。

甲状腺疾患になると脱毛してしまうのはなぜ?3つの原因を解説

髪の毛を気にする女性

甲状腺疾患になると甲状腺ホルモンの分泌に影響が出て、様々な不調に悩まされるようになります。中には、脱毛の症状が現れる方もいます。
甲状腺疾患にかかると脱毛する原因は、以下の3点です。

  • 甲状腺ホルモンの過剰分泌で代謝が過度に活発化するから
  • 甲状腺ホルモンの不足で髪の毛が成長しにくくなるから
  • 円形脱毛症を合併しているから

甲状腺疾患で脱毛する原因①甲状腺ホルモンの過剰分泌で代謝が過度に活発化するから

甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが過剰分泌されます。新陳代謝などが過度に活発化し、ヘアサイクルに影響を及ぼして脱毛します。
ヘアサイクルとは、1本の髪の毛が成長し始めてから抜け落ちるまでの期間です。ヘアサイクルは、髪が太く長く成長する「成長期」、髪の成長が停止する「退行期」、次の髪が生えるまでの準備をする「休止期」の3種類の期間に分けられます。

甲状腺ホルモンの過剰分泌によって代謝が活発になりすぎると、成長期の髪の毛が通常よりも早く休止期に移行し、細く短い抜け毛が増えるようになります。

甲状腺疾患で脱毛する原因②甲状腺ホルモンの不足で髪の毛が成長しにくくなるから

甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンが不足します。甲状腺機能亢進症と同様、ヘアサイクルが乱れることで脱毛症状が現れる場合があります。

甲状腺ホルモンは、ヘアサイクルの成長期を延長する作用があるとされています。
そのため、甲状腺機能低下症によって甲状腺ホルモンが不足すると、毛髪は本来よりも早く休止期を迎えて抜け毛の症状が現れるのです。

参考:
Thyroid hormones directly alter human hair follicle functions: anagen prolongation and stimulation of both hair matrix keratinocyte proliferation and hair pigmentation – PubMed

甲状腺疾患で脱毛する原因③円形脱毛症を合併しているから

円形脱毛症とは、頭髪などの体毛が円形や楕円形に抜けてしまう疾患です。
円形脱毛症と甲状腺疾患はどちらも同じ自己免疫疾患で、合併しやすいという特徴があります。円形脱毛症と甲状腺疾患の合併率は8%だという報告もあります。
兆候がないまま円形や楕円形に毛が抜けたら、円形脱毛症の発症を疑いましょう。

円形脱毛症の初期症状や治療法については、以下の記事で詳しくお伝えしています。ぜひ参考にしてください。

円形脱毛症の初期症状とは?進行する前に気づいたらすぐ治療しよう!

参考:
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

甲状腺疾患ではなぜ円形脱毛症を合併しやすいの?

甲状腺疾患ではなぜ円形脱毛症を合併しやすいの?

甲状腺疾患は円形脱毛症を合併しやすいとお伝えしました。
甲状腺疾患を発症すると円形脱毛症も合併しやすいのは、どちらも自己免疫疾患だからだと考えられます。

自己免疫疾患とは、本来はウイルスなどの外敵から身を守るための免疫に異常が起き、自身の正常な細胞や組織を異物として攻撃してしまう病気です。発症には、遺伝的要因や環境的要因が関わっているとされています。
甲状腺疾患になったということは、免疫に何らかの異常が起きたということです。そのため、同じ自己免疫疾患の円形脱毛症も発症しやすくなると考えられます。

参考:
自己免疫性疾患 | 国立成育医療研究センター

円形脱毛症以外の脱毛症は合併しないの?

甲状腺疾患は円形脱毛症を合併せずとも脱毛症状が現れる場合があります。甲状腺ホルモンの過剰分泌や不足によって、ヘアサイクルが乱れるからです。
甲状腺ホルモンが多すぎても少なすぎても、ヘアサイクルの成長期は短縮されます。本来はもっと成長するはずだった髪の毛が早く休止期に移行するため、抜け毛が増えます。

脱毛症を合併しやすい甲状腺疾患「バセドウ病」とは?

「バセドウ病」は自己免疫疾患の一種で、1000人あたり0.2~3.2人が発症していると言われています。また、20~30代の若い女性に多いという特徴があります。

甲状腺ホルモンは、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンが「TSH受容体」を刺激することで分泌されています。しかし、バセドウ病を発症するとTSH受容体に対する自己抗体が体内で作られます。
結果、TSH受容体が刺激され続けるため、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて心身の不調を招くのです。

参考:
バセドウ病|一般の皆様へ|日本内分泌学会
What’s 甲状腺? ~甲状腺って何?(こうじょうせんってなに?)~

バセドウ病の主な症状

バセドウ病の主な症状は、以下の通りです。

  • 疲れやすい
  • 暑がり、発汗
  • 微熱
  • 眼球突出
  • 甲状腺腫大による首の腫れ
  • イライラ感、集中力の低下
  • 手指の震え
  • 不眠
  • 動悸、息切れ
  • むくみ
  • 口が渇く
  • 脱毛
  • かゆみ
  • 筋力の低下
  • 月経不順
  • 血圧の上昇
  • 食欲の増加
  • 体重の減少
  • 軟便、下痢
  • 肝障害

一つひとつの症状を見ると、軽微なものが多いと感じるかもしれません。実際に「集中力が低下してイライラするようになった」「眠れない日が増えた」などの症状があっても、ちょっと調子が悪いだけだと判断してしまう方は多いと思います。
放置すると悪化するケースが多いため、当てはまる症状がある方や心身の不調が長引いている方は、医療機関を受診してください。

バセドウ病の治療方法

バセドウ病には以下の治療方法があります。

  • 薬物療法(抗甲状腺剤で甲状腺ホルモンの分泌を抑える)
  • 手術療法(甲状腺ホルモン産生組織を切除する)
  • アイソトープ治療(放射線を出すヨードを内服する)

基本的にはまず薬物療法を行います。甲状腺ホルモンの分泌量を減らすことで、正常に戻します。
しばらく服用しても良くならない場合や、抗甲状腺剤による副作用で服用を続けるのが難しい場合は、手術療法やアイソトープ治療を検討します。

甲状腺そのものを切除するという方法が手術療法で、全摘出が主流です。甲状腺ホルモンが作られなくなるため、甲状腺ホルモン剤を服用して補います。
治療効果が確実に得られますが、入院が必要だったり手術の傷が残ったりする点がデメリットです。

アイソトープ治療では、放射性ヨードの入ったカプセルを飲んで甲状腺の組織を破壊します。ヨードを取り込むという甲状腺の性質を利用して、甲状腺を小さくします。
アイソトープ治療を行うと甲状腺ホルモンを分泌する能力が低下するため、甲状腺機能低下症になるおそれがあります。この場合も、甲状腺ホルモン剤で補います。

参考:
バセドウ病になったら|あすか製薬株式会社

バセドウ病は甲状腺機能亢進症の一種

誤解されがちですが、「甲状腺機能亢進症=バセドウ病」ではありません。いくつか種類がある甲状腺機能亢進症のうち、代表的なものがバセドウ病です。
甲状腺機能亢進症はバセドウ病のほか、甲状腺に炎症を起こす「亜急性甲状腺炎」や、しこりがホルモンを過剰産生する「機能性甲状腺結節」などの病気があります。

甲状腺機能亢進症による髪の抜け方

甲状腺機能亢進症を発症すると、代謝が活発になりすぎることで通常よりも早く休止期に移行する髪が増えるため、成長しきらないまま毛が抜けます。
抜けた毛は成長しきれていないので、細かったり短かったりします。発毛途中の抜け毛が増えていて、併せて眼球突出や首の腫れ、体調不良などの症状がある方は、甲状腺機能亢進症の発症を疑いましょう。

バセドウ病を治療することで脱毛の症状も改善できる可能性がある

バセドウ病で脱毛症状にお悩みの方も多いかと思いますが、治療を受ければ甲状腺ホルモンを正常に戻すことが可能です。乱れたヘアサイクルも正常に戻るので、脱毛の症状を改善させる効果が期待できます。
首の腫れや脱毛などの自覚症状があれば、内分泌科や耳鼻咽喉科にご相談ください。

脱毛症を合併しやすい甲状腺疾患「橋本病(慢性甲状腺炎)」とは?

橋本病(慢性甲状腺炎)とは?

「橋本病(慢性甲状腺炎)」は自己免疫疾患の一種です。バセドウ病と同様に女性に多くみられる病気で、特に30~40代の女性が発症しやすいです。

橋本病を発症すると、免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が生じます。
炎症により甲状腺組織が少しずつ壊され、甲状腺ホルモンが不足することで心身の不調につながります。
ただし、橋本病だと診断を受けても甲状腺機能が正常だった場合、原則的に治療は必要ありません。橋本病を発症した方の中で甲状腺機能低下症だとされるのは、4~5人に1人未満だと言われています。

参考:
橋本病(慢性甲状腺炎)|一般の皆様へ|日本内分泌学会
What’s 甲状腺? ~甲状腺って何?(こうじょうせんってなに?)~

橋本病(慢性甲状腺炎)の主な症状

橋本病の主な症状は、以下の通りです。

  • 疲れやすい
  • 寒がり
  • 体温の低下
  • 甲状腺腫大による首の腫れ
  • 無気力
  • のどの違和感、かすれ声
  • いつも眠い
  • 脈が遅い
  • むくみ
  • 皮膚の乾燥
  • 脱毛
  • 肩こり
  • 筋力の低下
  • 月経不順
  • コレステロールの上昇
  • 食欲の低下
  • 体重の増加
  • 便秘
  • 肝障害
  • 貧血

中でも自覚しやすい症状は、首の腫れです。甲状腺が腫れることで首の違和感や圧迫感を生じ、表面もゴツゴツと硬くなります。
また、「寒がり」や「いつも眠い」、「便秘」など、バセドウ病とは逆の症状がみられるのも橋本病の特徴です。当てはまる症状が多い方は、専門の医療機関にご相談ください。

橋本病(慢性甲状腺炎)の治療方法

橋本病の発症によって甲状腺機能低下症だと診断された場合、主に「合成T4製剤」という甲状腺ホルモン剤の内服を行います。甲状腺ホルモンと同じ成分を化学的に合成した薬で、服用することで足りない甲状腺ホルモンを補います。
また、ヨードの過剰摂取が疑われる場合は、海藻類などの食品を控えるヨード制限も行います。

橋本病(慢性甲状腺炎)は甲状腺機能低下症の一種

橋本病は甲状腺機能低下症の代表的な病気です。
橋本病以外だと、生まれつき甲状腺機能が低下している「先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)」や、脳の視床下部・下垂体の病気による「中枢性甲状腺機能低下症」なども甲状腺機能低下症の一種です。

甲状腺機能低下症による髪の抜け方

甲状腺機能低下症を発症するとヘアサイクルが乱れ、髪の毛が抜けるようになる場合があります。ヘアサイクルの成長期を延長する作用がある甲状腺ホルモンが足りなくなるため、抜け毛の症状が現れます。
首の違和感や圧迫感などの症状と併せて髪の毛が抜けるようになった方は、甲状腺機能低下症の発症を疑いましょう。

橋本病(慢性甲状腺炎)を治療することで脱毛の症状も改善できる可能性がある

橋本病による脱毛症状は、橋本病を治療することで改善される効果が期待できます。不足している甲状腺ホルモンを薬で補えば、乱れたヘアサイクルも正常に戻ります。
まずは医療機関に相談し、橋本病の治療を行いましょう。しばらく治療を続けていても抜け毛が治らない場合は、医師にご相談ください。

円形脱毛症は甲状腺疾患を合併している可能性があるため血液検査を行うケースもある

女性医師のイメージ

円形脱毛症を発症した場合、血液検査を行うことがあります。前述のように、甲状腺疾患を合併している可能性があるからです。
ただし、円形脱毛症の血液検査はあくまで合併症の可能性を探るのが目的です。特定の数値をチェックすることで円形脱毛症を発症しているかどうか判断できるわけではないので、ご注意ください。

以下の記事では、AGA治療で血液検査を行う理由や、来院から血液検査までの流れについて解説しています。併せてお読みください。

AGA治療の前に血液検査は必要?調べる項目や目的を解説

甲状腺疾患以外に円形脱毛症を併発しやすい疾患

バセドウ病などの甲状腺疾患以外に円形脱毛症を併発しやすい疾患は、以下の通りです。

  • 尋常性白斑
  • SLE
  • 関節リウマチ
  • 重症筋無力症
  • アトピー性皮膚炎
  • 気管支炎
  • アレルギー性鼻炎

尋常性白斑やSLEは、円形脱毛症と同じく免疫の異常が原因だと考えられている疾患です。
また、アトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎のいずれか)のある方を「アトピー素因」と言います。円形脱毛症患者の40%以上はアトピー素因を持つとされており、円形脱毛症を合併しやすいと言えます。

参考:
【専門医監修】円形脱毛症の発症の原因は?|円形脱毛症でお悩みの方へ | 円形脱毛症.com

脱毛やAGAに関するご相談はウィルAGAクリニックへ

甲状腺疾患にかかると脱毛してしまう原因や、円形脱毛症を合併しやすい理由についてお伝えしました。
甲状腺疾患によって甲状腺ホルモンが過剰になったり不足したりすると、ヘアサイクルが乱れて脱毛症状が現れる場合があります。また、同じ自己免疫疾患の円形脱毛症も合併しやすいです。
首の腫れや疲れやすさ、脱毛などにお悩みの方は甲状腺疾患の可能性があるため、医療機関にご相談ください。

ウィルAGAクリニックは、オーダーメイドAGA・薄毛治療が特徴のクリニックです。一人ひとりに合った治療を行うことで、発毛効果を最大限に発揮します。
最適なプランをご提案いたしますので、脱毛やAGAに関するご相談は当院にお任せください。

【よくある質問】

甲状腺疾患になると脱毛してしまう原因は?
甲状腺疾患で脱毛が起きる原因は、以下の3点です。・甲状腺ホルモンの過剰分泌で代謝が過度に活発化するから
・甲状腺ホルモンの不足で髪の毛が成長しにくくなるから
・円形脱毛症を合併しているから

甲状腺疾患と円形脱毛症にはどのような関係がありますか?
甲状腺疾患と円形脱毛症はどちらも自己免疫疾患であり、併発しやすいです。

この記事の監修者
田沼 欣樹
医療法人社団紡潤会 指導医

防衛医科大学校卒業/初期研修終了後、大手美容クリニックの勤務を経てAGAの症例を延べ1万例以上経験した後、医療法人社団紡潤会に入社。症例を集計した独自の調査によりデータ化を行った上、論文等の調査報告と照らし合わして、データに基づいた診察を行う。

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防衛医科大学校卒業/初期研修終了後、大手美容クリニックの勤務を経てAGAの症例を延べ1万例以上経験した後、医療法人社団紡潤会に入社。症例を集計した独自の調査によりデータ化を行った上、論文等の調査報告と照らし合わして、データに基づいた診察を行う。

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