AGAの進行と筋トレには関係があるの? 専門医が研究結果を基に総合的に判断

公開日 / 2020.08.21 更新日 / 2023.12.01
この記事の監修者
宮内 俊
ウィルAGAクリニック 総括院長

AGA患者70,000件以上※の治療実績から生まれた独自の発毛理論をもとに、表参道ウィルAGAクリニック開院。 2018年5月ウィルAGAクリニックに改名し、全国14院を展開。現在、ウィルAGAクリニックの総括院長、医療法人社団紡潤会の理事長として日進月歩研究を進めながら、日々の診療にあたる。千葉大学医学部卒。

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AGA患者70,000件以上※の治療実績から生まれた独自の発毛理論をもとに、表参道ウィルAGAクリニック開院。 2018年5月ウィルAGAクリニックに改名し、全国14院を展開。現在、ウィルAGAクリニックの総括院長、医療法人社団紡潤会の理事長として日進月歩研究を進めながら、日々の診療にあたる。千葉大学医学部卒。

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「筋肉トレーニングをしすぎるとAGA(男性型脱毛症)が進行するのではないか」と心配する人がいます。
「男らしい人ほどAGAを発症しやすい」というイメージや、「筋トレを積むと男らしさが増す」という印象から、この「筋トレAGA説」が生まれたものと推測できます。

では、筋トレAGA説は正しいのでしょうか。
AGAの治療を専門に行っている医師の研究結果を参考にしつつ、見解を述べていきます。

 AGAの進行と筋トレには関係があるのか

AGAの進行と筋トレの関係について、結論を先に紹介すると、次のようになります。

・筋トレがAGAを悪化させることを、完全に否定することはできない
・筋トレをすると必ずAGAが悪化すると断定することもできない

いささか歯切れが悪い結論であると感じるかもしれませんが、この回答はとても重要です。
世間には「○○だから薄毛になる」といった説がいくつも流布していますが、AGAについては解明されていない部分が多く存在するので、そのような短絡説の多くは科学的に証明されていません。
ましてや、筋肉と頭髪はお互いにかなり離れた存在であり、この2つの因果関係を証明することは容易ではありません。
そのため、筋トレAGA説を完全肯定も完全否定もしていない見解のほうが、信頼できるといえます。

 筋トレ時の血中テストステロンの変化

筋トレとAGAの進行の関係について、アメリカの運動学の権威である、ノーステキサス大学のヤコブ・L・ヴィングレン氏は、次のような見解を示しています(*1)。

激しい筋トレをすると、血中のテストステロンという物質の値が上昇するが、筋トレを終えると30分以内にテストステロン値は平常値に戻る

AGAの素因を持っている男性の血中のテストステロンが増えると、AGAが発症したり、進行したりすることは知られています。
素因とは、ある結果を生じさせる原因のことです。
AGAとテストステロンという物質の関係については後述します。

筋トレをしてテストステロンが上昇すれば、AGAリスクが高まりそうです。しかし筋トレ終了から30分で平常値に戻るのであれば、AGAリスクを高めるほどの効果はないと考えるしかありません。
そのため、この実験結果からは、筋トレがAGAを発症させたり、AGAを進行させたりすることはない、と導くことができます。

 AGAの進行とテストステロンの関係性

テストステロンとは、男性ホルモンの1つです。テストステロンは「AGAを直接的に誘発する物質」ではありませが「AGAに関わる物質」です。

テストステロンは、5α還元酵素という物質の作用を受けると、ジヒドロテストステロン(DHT)という、別の男性ホルモンに変わります。5α還元酵素も体内にあります。
DHTが発生すると、髪の毛の成長を抑制してしまうので、AGAにつながってしまいます。
DHTが「AGAを直接的に誘発する物質」なので、それを生むテストステロンは「AGAに関わる物質」となります。

テストステロンが「悪い物質ではない」ことを知っておくことは重要です。テストステロンは筋肉を増やす効果があるからです。
日本Men’s Health医学会によると、テストステロンが減少すると筋力が落ち、肥満、糖尿病、循環器病のリスクが高まることがわかっています。
テストステロンは健康維持に大きく関わるだけに、DHTやAGAと関連するものの、忌避しないほうがよい物質ということができます。

筋トレによってテストステロン上昇もフィナステリドを服用することでDHT生成は抑えられる

ではテストステロンのよい面を採り入れ、DHTによるAGAを回避するにはどうしたらよいのでしょうか。
その答えの1つが、フィナステリドという薬を利用することです。フィナステリドは、AGA治療薬の成分です。
フィナステリドは、テストステロンがDHTに変わることを妨げる効果があります。DHTにならないので、フィナステリドがAGA治療で使われるわけです。

 運動の「強度」×「頻度別」にAGAとの関係を調査した結果

ヤコブ氏の研究結果は筋トレAGA説を否定したことになりますが、別の研究者は別の見解を示しています。

韓国の延世大学校ウォンジュ医科大学・毛髪美容研究所のジェウン・チェ氏たちは、1,000人を対象に、運動習慣とAGAの関係を調べました。
その結果、次のことがわかりました。

・AGA患者は、「低負荷かつ高頻度」の運動習慣を持つ割合が高い
・「低負荷かつ高頻度」の運動習慣のある人のAGAの割合が高い
・「高負荷」の運動習慣の頻度とAGAには関連性がなかった

チェ氏たちは、
高負荷;筋トレ などの激しい運動
低負荷:ウォーキング などの緩やかな運動
のことを指しています。

この研究のポイントは運動習慣を「高負荷と低負荷」「高頻度と低頻度」にわけて分析したところです。

3つ目の「筋トレのような高負荷の運動習慣の頻度とAGAには関連性がなかった」という結論は、ヤコブ氏の研究結果と似た内容になっています。

ただチェ氏たちの研究結果の1つ目と2つ目の「低負荷かつ高頻度」とAGAの関係が気になります。
これが事実であれば、ウォーキングのような軽めの有酸素運動を頻繁に行っている人はAGAを発症するのではないか、という心配が湧いてきます。
この結果をどのように受け止めたらよいのでしょうか。

 AGAの進行と筋トレについて結論・考察

AGA治療を専門に行っている医師は、ヤコブ氏とチェ氏の研究結果から、高負荷といえるような激しい筋トレとAGAの関連性はない、とみています。
ただ、チェ氏たちの研究結果から、軽負荷かつ高頻度の運動習慣とAGAの進行については、今後さらに研究を重ねる必要があるとしています。
つまり、チェ氏の研究結果だけでは、「軽負荷かつ高頻度の運動習慣はAGAリスクを高める」と断定できないという見方です。

なぜなら、先ほど紹介したDHTや運動をする動機についても検討を加える必要があるからです。運動習慣とAGAの関係を証明するには、運動習慣別に毛髪密度を測定するなどの研究が必要になるでしょう。

 まとめ

激しい筋トレをするとAGAになりやすくなる――筋トレAGA説は、どことなく信憑性があるような感じがします。
しかし、健康や病気に関する短絡的な説は、往々にしてあとから否定されます。
筋トレAGA説も、激しい筋トレとAGAとの関係は否定できそうですが、軽め運動を高頻度に行った場合とAGAの関係は、むしろ肯定されそうな研究結果になっています。

AGAを心配している人は、運動との関連性に高い関心を抱くと思いますが、くれぐれも短絡的な説に飛びつかないようにしてください。

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