円形脱毛症の進行が止まらない理由とは?原因や治療法を解説します
「円形脱毛症の進行が止まらない理由や対処法は?」
「円形脱毛症ってどんな治療をするんだろう…」
円形脱毛症は、円形や楕円形に髪の毛が抜ける疾患です。早期に回復するケースが多いですが、中には長期化したり重症化したりするケースもあります。
この記事では、円形脱毛症の進行が止まらない理由や主な治療法、対処法を解説していきます。円形脱毛症の進行が止まらず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
円形脱毛症の進行が止まらない場合はどれくらいで治る?
円形脱毛症には、いくつかの種類があります。
一番多いのは円形脱毛斑が1つだけ生じる単発型、いわゆる「10円ハゲ」と呼ばれるタイプです。単発型は、80%程度の方が1年以内に治癒すると言われています。
ただ、円形脱毛症の単発型はさらに進行し、円形脱毛斑が2つ以上発生する「多発型」になることがあります。この場合、治療期間は半年から 2年程度となるケースが多いとされています。
さらに重症なタイプは「蛇行型」・「全頭型」・「汎発型」で、治療が長期化しやすいです。
以下の記事では、円形脱毛症の初期症状や進行中の症状について解説しています。併せてお読みください。
参考:
・【専門医監修】種類別の症状|円形脱毛症でお悩みの方へ | 円形脱毛症.com
治療が長期化するケースもある
「蛇行型」・「全頭型」・「汎発型」はどれも治療が長期化しやすい傾向にあります。
3つのタイプは、それぞれ以下のような特徴があります。
- 蛇行型:脱毛斑が細長く結合し、後頭部から側頭部の生え際にそって広がる。治療は複数年に渡る場合がある。
- 全頭型:脱毛班が頭部全体に広がり、完全に抜け落ちる。治療は長期化する場合が多い。
- 汎発型:頭髪だけでなく、まつ毛や体毛など全身の毛が抜け落ちる。症状は円形脱毛症の中で最も重く、治療は長期化する場合が多い。
円形脱毛症の進行が止まらない理由
では、円形脱毛症の進行が止まらないケースがある理由は何でしょうか?
それは、円形脱毛症にはさまざまな原因が絡んでいると考えられているため、治療が難しいからです。今行っている治療が適していなかったり、患者様の状況が変わっていたりする可能性もあります。
円形脱毛症の発症には、以下の4点が関わっているとされています。
- 自己免疫疾患
- 精神的ストレスの影響
- 遺伝的要因
- アトピー素因
参考:
・【専門医監修】円形脱毛症の発症の原因は? 円形脱毛症でお悩みの方へ | 円形脱毛症.com
円形脱毛症の進行が止まらない理由①:自己免疫疾患
円形脱毛症の原因の一つは、自己免疫疾患です。
私たちの身体には、免疫と呼ばれるシステムがあります。ウイルスや細菌などの異物を攻撃することで、身体を守ってくれています。しかし、免疫に何らかの異常が生じて、正常なはずの自分の組織を攻撃してしまうことがあり、これを自己免疫疾患と言います。
円形脱毛症は自己免疫疾患の一種で、免疫によって毛包が攻撃されることで脱毛すると考えられています。
円形脱毛症の進行が止まらない理由②:精神的ストレスの影響
円形脱毛症の発症には、精神的ストレスが関わっていると考えられます。
従来、円形脱毛症はストレスによって発症するとされていました。しかし現在では、ストレスは円形脱毛症を直接発症させるというよりも、あくまで誘因するものの一つだろうと考えられています。
約10万人の患者を対象にしたスウェーデンの研究によると、PTSDや適応障害といったストレス関連障害を抱えた人は、そうでない人に比べて自己免疫疾患のリスクが高いことがわかりました。この結果からも、精神的ストレスは円形脱毛症の発症につながる可能性があると言えます。
また、ストレスを溜めると交感神経が活発になりやすく、血管の収縮を引き起こします。血流が悪化することで髪に栄養が届きにくくなるため、脱毛の症状が現れると考えられます。
参考:
・脱毛症 Q11 – 皮膚科Q&A|公益社団法人日本皮膚科学会
・Association of Stress-Related Disorders With Subsequent Autoimmune Disease
円形脱毛症の進行が止まらない理由③:遺伝的要因
円形脱毛症の原因には、遺伝的要因もあるとされています。
中国で行われた大規模な調査では、円形脱毛症患者の 8.4%に家族内発症があったうえ、親族関係が近いほど発症率が高いという結果でした。さらに欧米の調査でも、 1親等内での 円形脱毛症を発症する可能性は、一般の場合に比べて 10 倍だったそうです。
参考:
・男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版|日本皮膚科学会ガイドライン
円形脱毛症の進行が止まらない理由④:アトピー素因
アトピー素因とは、アトピー性疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか)を持っている人のことを指します。
円形脱毛症の患者 200 例を対象にした日本の調査では、患者本人や家族にアトピー素因があったものが 54%,患者本人にあったものが 41%でした。
円形脱毛症の10人に4人はアトピー性素因があったという結果と考えると、大きく関係していると考えられます。
参考:
・脱毛症 Q11 – 皮膚科Q&A|公益社団法人日本皮膚科学会
・男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版|日本皮膚科学会ガイドライン
円形脱毛症を治すには?主な治療法
次に、円形脱毛症を治す方法をお伝えします。
主な治療法は、以下の5点です。
- 外用薬(塗り薬)
- 内服薬(飲み薬)
- ステロイド局所注射
- 局所免疫療法
- 冷却治療(ドライアイス療法)
参考:
・【専門医監修】円形脱毛症の治療方法 円形脱毛症でお悩みの方へ|円形脱毛症.com
・男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版|日本皮膚科学会ガイドライン
円形脱毛症の治療①:炎症や免疫機能などに有効な外用薬(塗り薬)
円形脱毛症の治療で使われる外用薬(塗り薬)は、患部の炎症や免疫機能などに対して有効です。
代表的なのは、ステロイド外用薬です。塗った部分の炎症を抑えたり、免疫機能を抑制したりする作用があります。日本皮膚科学会によるガイドラインでも、単発型から融合傾向のない多発型の円形脱毛症に対して推奨されている治療法です。
そのほか、カルプロニウム塩化物外用薬やミノキシジル外用薬が使われることもあります。どちらも診療実績が豊富で、発毛を促進させる効果があります。
円形脱毛症の治療②:炎症や免疫機能などに有効な内服薬(飲み薬)
円形脱毛症の治療で使われる内服薬(飲み薬)は、患部の炎症や免疫機能などに作用します。
例えばステロイド内服薬の場合、炎症と免疫機能をどちらも抑制する効果があります。日本皮膚科学会によるガイドラインでは、成人で重症・進行性の円形脱毛症に対して行ってもよいとされています。
ほかには、アレルギー症状を緩和する第2世代抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)、炎症やアレルギーを抑えるグリチルリチン・グリシン・メチオニン配合錠などの内服薬があります。
新しい治療薬「JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬」
「JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬」は、内服薬の中でも比較的新しい薬です。
免疫の作用による炎症は、サイトカインという物質が細胞を刺激することで発生します。この反応にはJAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素が関わっています。
JAK阻害薬は名前の通りJAKを阻害する作用があるため、免疫システムによる「炎症を起こせ」という命令がうまく伝わらなくなり、炎症を防ぐことができます。
参考:
・JAK阻害薬 | 一般社団法人 日本リウマチ学会(JCR)
円形脱毛症の治療③:炎症や免疫機能に有効なステロイド局所注射
ステロイド局所注射は、炎症や免疫機能を抑える作用のあるステロイドを注射で直接注入する治療法です。成人で単発型・多発型の場合に行われることがあります。
ただ、脱毛が広範囲に及んでいるケースでは注射を何度も行う必要があり、注射部位には萎縮や痛みが発生するため注意が必要です。また、子供に対しては長期経過をみた症例が少ないうえ痛みが強いことから、基本的に行いません。
円形脱毛症の治療④:免疫機能に有効な局所免疫療法
局所免疫療法は、SADBEやDPCPなどのかぶれを引き起こす薬を患部に塗ることで発毛を促す治療法です。ガイドラインでは年齢を問わず、脱毛範囲の広い多発型・全頭型・汎発型の場合に治療の第一選択肢として行うよう推奨しています。子供に対しても治療できるのは、大きなメリットだと言えます。
ただし、アトピー性皮膚炎を発症しているケースでは皮膚症状が悪化するおそれがあるため、注意が必要です。
円形脱毛症の治療⑤:免疫機能に有効な冷却治療(ドライアイス療法)
冷却治療(ドライアイス療法)は、液体窒素やドライアイスなどを脱毛部分に当てて免疫細胞の働きを抑える治療法です。簡単に行いやすく、副作用のリスクが低いです。
利用される液体窒素には圧抵式とスプレー式がありますが、どちらがより効果的なのかははっきりわかっていません。
円形脱毛症の進行が止まらない・重症化している場合の対処法
中には、円形脱毛症の進行が止まらなかったり重症化したりして、悩んでいる方もいるでしょう。
対処法は、以下の3点です。
- 医師に相談して治療を変える
- 上手な隠し方を覚える
- ストレスを溜めすぎない
円形脱毛症の進行が止まらないときの対処法①:医師に相談して治療を変える
治療を行っているのに円形脱毛症の進行が止まらない場合は、治療法が合っていない可能性が考えられます。医師に相談し、詳しい症状を伝えましょう。円形脱毛症にはさまざまな治療法があるので、症状やお悩みに合わせたプランを提案します。
また、民間療法のようなエビデンスのない方法は効果がないばかりか、症状が悪化したり心身に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。まずは、専門家の指導のもと治療を進めるようにしましょう。
円形脱毛症の進行が止まらないときの対処法②:上手な隠し方を覚える
重症化した円形脱毛症の場合、すぐに完治することは難しいです。円形脱毛症と上手に付き合うために、脱毛部位の隠し方を覚えることがおすすめです。
脱毛班が少ない・小さいケースでは、髪型を工夫したりヘアファンデーションをつけたりする方法があります。重症のケースだと、帽子やスカーフ、ウィッグを活用すれば頭部全体を隠すことが可能です。
参考:
・円形脱毛症における脱毛部分の上手な隠し方|【円形脱毛症.com】(株式会社スヴェンソン)
円形脱毛症の進行が止まらないときの対処法③:ストレスを溜めすぎない
円形脱毛症の原因の一つは、ストレスです。進行が止まらない場合や重症化した場合はとても辛く感じるかもしれませんが、ストレスを溜めてしまうと治療に悪影響を及ぼす可能性があります。
大好きな趣味に没頭する、適度な運動を始めるなど、自分なりのストレス発散法を工夫してみてください。
下記記事では、円形脱毛症でやった方がいいこと、反対にやってはいけないことを詳しく解説しています。併せてチェックしてみてください。
円形脱毛症にお悩みなら専門のクリニックで治療しよう
円形脱毛症の進行が止まらない理由や、主な治療法を解説しました。
円形脱毛症の進行が止まらないのは、いくつかの原因が絡んでいるため治療が難しいからです。ただし有効な治療法はいくつかあり、中にはJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬のように重症の円形脱毛症に効果的なものもあります。
症状に合った治療を受けるためにも、円形脱毛症にお悩みの方は専門のクリニックにご相談ください。
【よくある質問】
円形脱毛症には、以下の4点が関わっていると考えられています。
・自己免疫疾患
・精神的ストレスの影響
・遺伝的要因
・アトピー素因
・外用薬(塗り薬)
・内服薬(飲み薬)
・ステロイド局所注射
・局所免疫療法
・冷却治療(ドライアイス療法)