2020/09/02
射精はAGAの発症・進行に影響を与えるか
/ コラム /
2020/10/06
この記事の監修者
AGA(男性型脱毛症)治療を専門にするクリニックの医師たちは、原則、日本皮膚科学会がつくっている、通称「AGA・FAGAガイドライン」(以下、単にガイドライン)に沿って治療を進めています。
このガイドラインは専門家(医師)向けのものですが、AGAやFAGAに悩む人や、将来の薄毛を心配している人にも役に立つ情報が多く掲載されています。
そこでこのガイドラインを、一般の人にもわかりやすいように解説していきます。
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AGA・FAGAガイドラインの正式名称は「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」といい、以下のURLでその全文を読むことができます。
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
このガイドラインをつくったのは、皮膚科の専門医たちで構成する日本皮膚科学会です。同学会はガイドラインをつくるために、わざわざガイドライン制作委員会を立ち上げました。
同委員会に所属する委員は17人いて、彼らは、秋田大学大学院医学系研究科皮膚科学・形成外科学講座、東京医科大学皮膚科学分野、大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座、北里大学医学部皮膚科学講座など、国内の名だたる毛髪研究機関に所属する医師たち(教授たち)です。
委員会の布陣からも、このガイドラインが国内で最も権威のあるAGA治療マニュアルであることは明らかです。
ガイドラインの最大の特徴は、男性の薄毛であるAGA(男性型脱毛症)だけでなく、女性の薄毛であるFAGA(女性男性型脱毛症)にも言及しているところです。
薄毛は男性の病気というイメージが強く、2010年につくられた前回のガイドラインの名称も「男性型脱毛症診療ガイドライン」となっていました。「女性」の文字がありません。
しかし薄毛に悩む女性も決して少なくありません。そこで2017年版ガイドラインでは、タイトルを「男性型および女性型~」として「女性」の文字を盛り込み、FAGAの研究成果も紹介しています。
ガイドラインは、次のような構成になっています。
第1部 ガイドラインの概略
第1章 背景と目的
第2章 診療ガイドラインの作成手順
第3章 エビデンスの収集
第4章 エビデンスのレベルと推奨度の決定基準
第5章 資金提供者、利益相反
第6章 公開方法
第7章 ガイドラインの改訂
第8章 免責事項
第2部 疾患概念・病態と診断、治療
第1章 疾患概念
第2章 病態
第3章 診断
第4章 治療
医療従事者ではない、一般のAGA患者さんやFAGA患者さんにとって重要なのは、第2部になります。そこでこの記事でも、第2部の内容を中心に解説していきます。
ガイドラインではAGAとFAGAを次のように定義しています。
<AGAの定義>
・毛周期(ヘアサイクル)のうち成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなる
・前頭部(額の生え際)や頭頂部の頭髪が軟毛化して細く短くなる
・最終的には頭髪が皮表に現れなくなる
・20代後半から30代にかけて著明になり、徐々に進行して40代以後に完成される
・日本人男性の発生頻度は、全年齢平均で約30%
・20代は約10%、30代約20%、40代約30%、50代以降40数%
・男性ホルモンが関与する
<FAGAの定義>
・毛周期のうち成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなるのはAGAと同じ
・頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなるパターンが多い
・更年期以降に発症することが多い
・男性ホルモンの関与が確認できないこともある
AGAとFAGAは類似性があるものの、ほぼ別の病気とみています。
このガイドラインが優れているところは、さまざまなAGA治療法について明確に評価している点です。評価は5段階で、次のようになっています。
A:行うよう強くすすめる
B:行うようすすめる
C1:行ってもよい
C2:行わないほうがよい
D:行うべきではない
ガイドラインがA判定を下したAGA治療は次のとおりです。FAGAではありません。
・フィナステリドの内服
・デュタステリドの内服
・ミノキシジルの外用
内服とは飲み薬のことで、外用は塗り薬です。
この3つの薬は、多くのAGA治療専門クリニックの公式サイトでも紹介されていますが、それはこのガイドラインによるお墨つきがあるからでしょう。
女性の治療(FAGAの治療)では、フィナステリドもデュタステリドもD(行うべきではない)となっているので注意してください。
D評価は、その薬を使っても無効か、あるいは有害であることが証明されていることを意味します。
ただしミノキシジルは、FAGAでもA(行うよう強くすすめる)になっているので、女性も積極的に使うことができます。
BとC1を紹介する前にD(行うべきではない)とC2(行わないほうがよい)を紹介します。もし以下の施術を受けている場合、今一度検討したほうがよいかもしれません。
<AGA、FAGAともにDの評価を受けたもの>
・ミノキシジルの内服
・人工毛植毛術
ミノキシジルは「外用」はAでしたが「内服」はDになっています。飲まないようにしてください。
「植毛」は「人工毛」のみDになっています。あとで紹介しますが、「自毛」の「植毛」は高い評価を得ています。
<AGA、FAGAともにC2の評価を受けたもの>
・ビマトプロストおよびラタノプロストの外用
・成長因子導入および細胞移植療法
C2はDよりは「駄目度」が弱いわけですが、それでも国内の皮膚科の権威が「行わないほうがよい」といっているので、回避を検討したほうがよいでしょう。
ガイドラインが示すB(行うようすすめる)評価とC1(行ってもよい)評価の治療法は次のとおりです。
<B>
・自毛植毛術(AGAのみ)
・LED および低出力レーザー照射(AGA、FAGA共通)
・アデノシンの外用(AGAのみ)
<C1>
・自毛植毛術(FAGAのみ)
・アデノシンの外用(FAGAのみ)
・カルプロニウム塩化物の外用(AGA、FAGA共通)
・フラバノンの外用(AGA、FAGA共通)
・サイトプリンおよびペンタデカンの外用(AGA、FAGA共通)
・ケトコナゾールの外用(AGA、FAGA共通)
自毛植毛術は、自分の髪の毛を移植する手術で、男性(AGA)ではBですが、女性(FAGA)ではランクが1つ下がってC1になっています。
アデノシンも、男性はBで女性はC1です。
C1評価の治療は、B評価の治療より期待できる効果が低くなってしまいます。
またガイドラインでは、「かつらの着用」もAGA、FAGAともにC1評価になっています。
これは、かつらを着用した人のQOL(生活の質)や満足度が高まったという研究結果があるからです。男性も女性も、かつらによってプラスの効果が得られているようです。
ガイドラインは、かつらの使用について次のように補足しています。
●かつら着用は脱毛症状を改善するものではないが、通常の治療により改善しない場合や、QOLが低下している場合に、行ってもよいことにする
先にAGA治療やFAGA治療を試してみて、それでも効果がなかった場合にかつらを検討したほうがよいのではないか、という見解のようです。
参考になる考え方ではないでしょうか。
医師向けのガイドラインと聞くと「難しそう」と構えてしまいますが、AGA・FAGAガイドラインは、医療従事者ではない、一般の人でも理解できる内容が多く含まれています。そして、その内容は、薄毛に悩むすべての人に有益でしょう。
これからAGA・FAGA治療を受けようと考えている人も、AGA・GAFA治療を諦めている人も、ただ漠然と薄毛になることを不安に感じている人も、ぜひ一読しておくことをおすすめします。