「ミノキシジル」に「初期脱毛」という副作用がある理由と大丈夫な理由
「ミノキシジル」は「発毛成分」「育毛効果」という言葉を使ってPRすることができる、数少ない成分です。ミノキシジルは発毛剤や育毛剤に使われています。
しかし、人によっては、ミノキシジルを使ってヘアケアに取り組むと「初期脱毛」という症状が発生することがあります。
髪の毛を丈夫にしようとしてミノキシジルを使い始めたのに、なぜ「脱毛」が起きるのでしょうか。薄毛が悪化するなら、ミノキシジルなんて使いたくありません。
しかし、心配しないでください、初期脱毛はよい兆候といえるからです。つまり、初期脱毛は効果が出ている証拠なので、その期間が過ぎれば、発毛・育毛を実感できる可能性は高いといえます。初期脱毛は、普通の脱毛とはまったく別の症状なのです。
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https://www.youtube.com/watch?v=WM3-m8R2MYc
目次
ミノキシジルはAGAへの効果が期待できる成分
初期脱毛を説明する前に、そもそもミノキシジルとはどのような物質なのかを解説します。
ミノキシジルをAGA(男性型脱毛症)の治療領域で有名にしたのは、大正製薬の「リアップ」でしょう。
同社はミノキシジルについて次のように説明しています(*1)。
●ミノキシジルは90カ国以上で承認されている
●ミノキシジルを頭皮に使うことで毛包に直接作用し、発毛、育毛効果を発揮する
大正製薬がこれほど自信を持っているのは、ミノキシジルの発毛・育毛効果が、科学的医学的に証明されているからです。
*1:https://brand.taisho.co.jp/contents/riup/detail_200.html
新しい毛をつくるだけでなく、成長を促す
大正製薬によると、ミノキシジルは、1)新しい毛をつくり、2)髪の毛の成長を促すことで髪の毛に活力を与えます。
まず1)についてですが、髪の毛は生えてから2~6年ぐらい経つと抜け落ちて、同じ場所から新しい毛が生えてきます。
ミノキシジルはこのとき、新しい毛の発生を助けます。
そして2)についてですが、健康な新しい髪の毛は2~6年かけて、長く太くなります。ところがAGAを発症すると、2~6年経たずに、短いまま細いまま抜けてしまいます。ミノキシジルは毛包を成長させることで、そのような弱った髪に活力を与えます。
毛包とは髪の毛を生み出す、皮膚の器官です(*2)。
つまりミノキシジルは、髪の毛の本体に作用しながら(1)、髪の毛を生み出す皮膚にも刺激を与えている(2)わけです。
*2:https://shimizuderm.com/textbook03/pdf/1-08.pdf
初期脱毛とは
ミノキシジルが発毛と育毛を促すことは理解できたと思います。
ではなぜ、ミノキシジルが、髪の毛を減らすことになる「初期脱毛」を引き起こすのでしょうか。
そのメカニズムを解説する前に、初期脱毛について解説します。
初期脱毛は脱毛ではない
初期脱毛は脱毛ではありません。
脱毛とは、AGAなどの皮膚や髪の毛の病気で生じる、毛が抜ける現象です。
一方、初期脱毛は、発毛剤や育毛剤を使い始めた当初に起きる「成分の効果が出始めたサイン」です。
つまり、初期脱毛は成分の治療効果の現れといえます。脱毛とは全然違います。
ヘアサイクルが正常に戻るときの「一時的な症状」
初期脱毛を理解するには、髪の毛の一生である「ヘアサイクル」を知っておかなければなりません。
健康な髪の毛は、頭皮に現れてから2~6年かけて長く太く成長し(成長期)、その後、2、3週間かけて毛根が退行します(退行期)。さらに3、4カ月かけて毛根が退化して(休止期)、抜け落ちます。しかし、抜けた髪の毛があった毛穴には、次の新しい髪の毛が育っていて、再び成長期が始まります。
この「成長期→退行期→休止期→脱毛→新しい髪→成長期」の繰り返しを、ヘアサイクルといいます。
AGAはヘアサイクルに異常が起きた状態といえます。
そして育毛・発毛の効果が生じると、ヘアサイクルが正常に戻ります。
育毛・発毛とはヘアサイクルをリセットすること、といえます。
リセットは、新しい髪を生やすことから始めることでもあるので、それは、古い髪の毛を放棄することになります。
古い髪の毛を放棄するので、髪の毛が抜けるわけです。
これが初期脱毛のメカニズムです。そのため、初期脱毛は育毛・発毛の効果が出始めている証拠といえます。
なぜミノキシジルに初期脱毛が起きるのか
ミノキシジルを使っていても、初期脱毛を起さず、そのまま発毛・育毛効果を実感できる人もいます。
ただ人によっては、ミノキシジルの使い始めに、初期脱毛が起きる人がいます。
2つの効果が「あだ」になっている?
なぜミノキシジルを使った一部の人に初期脱毛が出てくるのかは、明確にはわかっていません。製薬メーカーはそもそも、ミノキシジルに初期脱毛の副作用がある、とはアナウンスしていません。
ただ、ミノキシジルを使って初期脱毛を経験したという情報はネットに溢れていますし、ミノキシジルの作用からすると初期脱毛が起きても不思議はありません。
ミノキシジルは先ほど紹介したように、髪の毛本体と、髪の毛を生み出す皮膚の器官(毛包)の両方に働きかけます。そして、髪の毛本体も毛包も、ヘアサイクルに深く関わっています。
初期脱毛がヘアサイクルのリセットによって生じるとしたら、ヘアサイクルに2方向からアプローチをするミノキシジルによって初期脱毛が発生しても不思議はありません。
そして、初期脱毛であれば、そのままミノキシジルを使い続ければ脱毛が止み、発毛・育毛効果を実感できるでしょう。
「異常」を感じたらクリニックへ
ミノキシジルを使い始めてしばらくして髪の毛の抜ける量が多くなっても、それが初期脱毛であれば心配する必要はありません。
しかし「異常」を感じたら、クリニックに相談するようにしてください。
ミノキシジル製品の説明書に、次のような記述があります(*3)。
脱毛状態の悪化や、次のような脱毛が見られた場合は、使用を中止し、この説明書を持って医師または薬剤師に相談してください。
頭髪以外の脱毛、斑状の脱毛、急激な脱毛など。
壮年性脱毛症以外の脱毛症であったり、脱毛が他の原因によるものである可能性があります。
引用:https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J1801000183_01_A.pdf
正常な初期脱毛なのか、異常な脱毛なのかは、利用者本人ではなかなか区別がつかないと思います。
不安を感じたら、まずはミノキシジルを購入したドラッグストアなどの薬局にいる薬剤師に相談してみてはいかがでしょうか。一般的な相談であれば、無料で応じてくれるはずです。
薬剤師からすすめられたら、皮膚科クリニックを受診するようにしてください。
*3:https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J1801000183_01_A.pdf
深刻でなければ6カ月使ってみては
初期脱毛が発生しても、深刻な印象がなければ、6カ月はそのまま使ってみてはいかがでしょうか。
ミノキシジルのメーカーは、6カ月使っても、脱毛状態、産毛の発生、硬毛の発生が改善しなければ、使用を中止したほうがよいとしています(*3)。
その他のミノキシジルの副作用
ミノキシジルには、初期脱毛以外の副作用があります。それは次のとおりです(*3)。
●皮膚への症状
頭皮の発疹・発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感
●精神神経系への症状
頭痛、気が遠くなる、めまい
●循環器への症状
胸の痛み、心拍が速くなる
●代謝系への症状
原因のわからない急激な体重増加、手足のむくみ
これらの症状が起きたら、すぐに使用を中止してください。
中止しても症状が治まらなければ、皮膚科クリニックにかかってください。
まとめ~変化の兆候はよい知らせ
大きな変化が訪れるとき、大抵は小さな被害をもたらします。その被害は、大きな変化のためのコストと考えることができます。
ミノキシジルはヘアサイクルに大きな変化をもたらします。支障をきたしたヘアサイクルが、正常なヘアサイクルに戻ることは、大きな変化です。
ミノキシジルを使った一部の人に初期脱毛が現れるのも、大きな変化のためのコストといえるでしょう。初期脱毛を、よい変化が始まった「しるし」と考えて、乗り切ってみてください。ただし「異常」を感じたら、薬剤師や医者に相談するようにしてください。