AGAで血液検査を行う理由は? 副作用リスクを抑えるのが大きな理由
AGA治療が受けられるクリニックの多くで血液検査が受けられます。注射器で血液を採血し、さまざまな項目を調べるのが血液検査です。
AGAの血液検査が気になる方のために、下記の点を解説していきます。
- 血液検査を行う5つの理由
- 血液検査に必要な費用
- 来院から血液検査までの流れ
結論から申し上げると、血液検査を行う大きな理由となるのが副作用リスクを調べるためです。他にもいくつかの理由がありますので、詳しく知りたい方は下記の解説をご覧ください。
目次
1.AGA治療で血液検査を行う5つの理由
AGA治療では下記を調べるために血液検査を行います。
- 重大な副作用リスクがあるか
- 投薬を続けられるか
- 薄毛の原因がAGAなのか
- 治療薬の効果を予測できるか
- 将来のAGA発症リスクが高いか
上記5つの理由について、詳しく説明していきましょう。
1-1.血液検査で重大な副作用リスクを調べる
なぜAGA治療で血液検査を行うのか、それは重大な副作用リスクを調べるためです。
AGA治療ではフィナステリドという有効成分がよく用いられています。科学的根拠のある信頼性の高い有効成分です。
しかし、下記の副作用が認められています。
- 性欲減退
- 勃起機能不全
- 射精障害・精液量減少
- じん麻疹・発疹
- 乳房肥大
- めまい
- 肝機能障害など
肝機能が低下している健康状態のときにフィナステリドを使用すると副作用リスクが高まります。それはフィナステリドが肝臓で代謝される有効成分だからです。
肝機能が低下し、代謝が悪くなるとフィナステリドが長く体内にとどまります。副作用リスクを抑えるため、フィナステリドの量を調節しないといけません。
場合によっては、フィナステリドの使用で肝機能障害といった重大な副作用が起こり得ます。肝機能障害の主な症状をご覧ください。
- 黄疸が出る
- おなかに水が溜まる
- 昏睡状態になる
有害物質の毒性を弱める解毒作用を持つのが肝臓です。しかし、肝機能が低下すると有害物質が体内に長くとどまり、肝性昏睡を起こす場合があります。
肝機能障害を起こした際、血中に増えるのが下記の物質です。
- AST(肝細胞や心筋、骨格筋に多く含まれる酵素)
- ALT(肝臓に多く含まれる酵素)
- γ-GTP(肝臓や腎臓、膵臓などに多く含まれる酵素)
AST・ALT・γ-GTPが上昇しているかどうか、血液検査を行えば分かります。
①個人輸入で入手したフィナステリドは偽物に注意
海外より個人輸入で入手できるフィナステリドには偽物リスクがあります。偽物のフィナステリドには、どのような副作用があるのか分かりません。
個人輸入で入手したフィナステリドを血液検査なしで使用するのはリスクが高いです。そのため、医師より血液検査を受け、正規のフィナステリドを処方してもらってください。
1-2.血液検査で投薬を続けられるかどうか調べる
血液検査は投薬を続けられるかどうか調べたいときにも有効です。
投薬開始前と投薬開始後に血液検査を行います。お酒をよく飲まれる方は、血液検査でのγ-GTP値が高めに出やすいです。
患者さんの健康状態によりますが、投薬開始前の値が高めでも投薬開始後の値が若干上昇する程度であれば投薬を続けられます。
医師から「若干高い値が出ましたが投薬を続けますか」と伝えられたら、続けるかどうか患者さんが判断してください。
値の上昇が大きいときは患者さんの安全のため投薬を中止します。
フィナステリドにある副作用のうち、肝機能障害はまれなケースです。しかし、血液検査で異常なしと分かれば、投薬を続けるときの安心感が違うでしょう。
1-3.血液検査で薄毛の原因がAGAなのかどうか調べる
薄毛の原因がAGAなのかどうか、調べたいときにも血液検査が有効です。
AGAは薄毛に悩まされる多くの男性に見られます。しかし、すべての男性の薄毛でAGAが原因とは限りません。
自己免疫の異常や感染症など、薄毛にはさまざまな原因があります。自己免疫の異常や感染症で薄毛になった患者さんにAGA治療を行っても効果は見込めません。そのため、薄毛の原因がAGAなのかどうか見極めてからの治療が大切です。
AGAは男性ホルモンの一種、ジヒドロテストステロン(DHT)が原因と考えられています。脱毛作用のあるDHTにより、ヘアサイクルの成長期が短くなり軟毛化が進むのがAGAです。
血液検査を行えば、AGAの原因となるDHT値が分かります。
1-4.血液検査でAGA治療薬の効果を予測する
血液検査はAGA治療薬の効果を予測したいときにも有効です。
フィナステリドは、99.4%の症例で効果が認められています。(1日1mgを5年間継続した場合) しかし、100%必ず効果が出る有効成分ではありません。フィナステリドの効果には個人差があると考えてください。
フィナステリドの効果が出始めると血中のDHT濃度が下がっていきます。フィナステリドの使用前と使用後で血液検査を行い、DHT値がどのように変化したのか調べれば効果の予測が可能です。
血液検査の予測は100%完全ではありません。しかし、全く予測できない状況とある程度予測できる状況では大きく違います。
フィナステリドの効果が出やすい方であっても、実感できるのは3か月~6か月後です。実感できる前に効果の予測ができれば、患者さんのモチベーションアップにつながるでしょう。
参考:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
1-5.遺伝子検査(血液の採血)で将来のAGA発症リスクを調べる
クリニックによっては血液の採血で遺伝子検査を行います。将来のAGA発症リスクを調べられるのが遺伝子検査です。
DHTが毛乳頭にあるアンドロゲンレセプターと呼ばれる受容体に結びつくと、AGAの症状がはじまります。アンドロゲンレセプターの感受性が強い方ほど、AGAを発症しやすいです。
アンドロゲンレセプターの感受性は遺伝子検査によって分かります。AGAを早期発見・早期治療したいときに役立つのが遺伝子検査です。
遺伝子検査を受けると20,000円ほどの費用がかかります。しかし、人の遺伝子は一生変わらないため、遺伝子検査を受けるのは1回だけです。
血液検査のように肝機能の値を調べるため、定期的に受ける必要はありません。
ただし、特殊な遺伝子検査となる関係上、クリニックによっては受けられない場合があります。遺伝子検査を希望している方は、受けられるクリニックへ来院してください。
2.血液検査はどのくらいの費用がかかるのか
血液検査の費用は5,000~10,000円が一般的です。血液検査の費用を節約するため、受けない選択肢もあるでしょう。
しかし、重大な副作用が起きると辛い症状に悩まされる場合があります。副作用リスクを抑えるためにも、血液検査を受けることをおすすめします。
クリニックや治療プランによっては無料で血液検査が受けられます。初診料無料のクリニックもあるため、費用が気になる方は事前に公式ホームページで調べてください。
3.はじめての来院から血液検査までの流れ
クリニックへの来院から血液検査までの流れは下記のとおりです。
- 予約したうえで来院する
- カウンセリング
- 医師による診察
- 血液検査
血液検査が終わり次第、薬の処方が受けられます。会計が済みましたら帰宅してください。
血液検査は下記の流れで行われます。
- 注射器で採血する
- 血液に含まれる物質を測定する
- 測定結果の報告
大量の血液をとるわけではありませんので、貧血の心配は少ないです。
ただし、注射針を刺すときに痛みがあります。痛みの感じ方は個人差がありますが、注射が苦手な方は事前に相談してください。
また、直近6か月以内に血液検査を受けている方は採血しない場合があります。会社の健康診断で血液検査を受けたばかりの方は、測定結果を持参するとよいでしょう。
ちなみにAST・ALT・γ-GTPの基準値は下記のとおりです。
肝機能検査の主な項目 | 基準値 |
AST | 10~40IU/L |
ALT | 5~45IU/L |
γ-GTP | 80IU/L以下(男性)/30IU/L以下(女性) |
※検査機関によって異なる場合あり
参考:https://hab.or.jp/library/med_info/pdf/drug_info_18.pdf